第21話 炎天下のエロチック寺院

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  6月20日 5時起床 霧が吹き付けるウォータークーラーのせいで、荷物も部屋もじとっと湿っぽい。朝食をとり駅まで行き、6時発のバスに乗る。幾つもの退屈な丘を越えてバスはでこぼこ道を進んだ。

 11時半 カジュラホに着く。何人ものホテルの引き込みに立ち往生。観光客は僕ら2人だけなのだ。今は暑いだけのオフシーズン。選んだのは一番安い7Re(7×25円=百七十五円)でシャワー付きのアップサーラホテル。昨日は55Reのホテルだったのに、何という価格差か?市場の角のレストランにてターリーを食べ昼寝をする。太陽は真上。ものすごい暑さだ。シャワーを何度も浴びながら過ごした。

 5時 陽も沈みそうになったので散歩に出る。遠くにたくさんの寺院のシルエットが見える。宿が安い分だけうまいものを喰うか・・・と言うことになり、ホテルアショークに行く。レストランには僕らだけだった。冷たく、おいしい水にほっとした。Vgカレー、カツレツなど味も良かった。おいしいとは言えライスだけで10Reだった。帰りに市場でマンゴウを買っていると話しかける青年がいて結局チャイをおごってもらった。どうも近くにダイアモンドの加工所があるらしい。それを見せて自分のもうけの種にしたいようだ。話もほどほどに宿に帰った。

 今夜も暑い。ホテルの外では何か騒がしくお祭りをしている。ばかでかい花火の音、はでな音楽、クリスマスが来たような沢山のランプの灯。聞けば結婚式のお祭りだと言うことだ。素朴で楽しい祝い事にほのぼのとしながらも、この暑さと音!今夜も良く眠れそうにない。

 6月21日 5時半 日の出とともに起床。さっそく西の寺院群へ観光に出かける。きれいな公園になっている中を歩きながら寺院を見ることが出来る。寺院はまるで冷却盤のあるエンジンの様な格好でそびえ立っていた。大きなもので四〇mの高さがある。その石の柱や外壁の至るところにミトナと呼ばれる彫刻が彫り巡らされていた。ミトナとは男女交合像だ。そのポーズは既婚者の僕らをも驚かせるものだ。しかし明るく健康的なその顔や姿態に、ましてこの太陽の元、赤裸々に表現されたその美しさはなんとすごいものだろう。隠したり、否定したりと暗いイメージにせず、その大らかさとエネルギーに脱帽の僕らだった。


vishwanth tempule
lakshimana tempule(右上)
kandariya tempule(右下)
豊満でエロチックなミトナ像が寺院のまわりにびっしり

 8時 レンタサイクルを借り、東の寺院群へ行く。こちらはジャイナ教と言う仏教に近い教えの寺院だが、ミトナが仏陀の回りにいて日本では考えられない雰囲気だ。暑さでくらくらする。裕子はさすがに疲れたらしい。宿に帰りシャワーを浴びてひと眠り。

ジャイナ教の像を前に

 お昼はカジュラホ1番のチャンデラホテルに行く。こちらはずっとはやっている様で、随所にきれいな制服のボーイがいて案内をしてくれる立派なホテルだ。空調もよく効いている。フルコースでゆっくり3時間もかけて腹いっぱい食べた。二人で68Reなり。(=千七百円) 夜は腹も減らず、近くの店でラッシーを飲みながら夕涼みを楽しんだ。

 6月22日 5時半起床 マンゴウを食べる。ひとりで東と南の寺院へ観光に出た。自転車でひどい砂利道を走らせて遠くのジャイナ教の寺院へ行った。とても質の高い彫刻が見られた。

 9時 裕子を後ろに乗せて西の寺院の公園に行く。木陰でごろ寝しながらくつろいだ。自由で豊かな気分だ。博物館を見学して帰る。気温は四〇度を越えていた。

 1時半 昼寝後再び裕子を後ろに乗せてチャンデラホテルへ!高給ホテルに乗り付ける格好ではないことに思わず苦笑してしまう。熱風吹き荒れる外とは違い中は楽園だ。またしても腹いっぱい食べ、ロビーでハガキ書きなどしながら半日過ごしてしまった。

 6時になっても気温は38.5度。外をぶらつくとあのチャイをおごってくれた青年と出会う。「うちへこい!」と彼。振り回されるのが嫌なので「ノー」と言うと「あのチャイ代を返せ!」ときた。カモにならないとなると手の平を返したような態度。つっぱねて早々に帰った。

 6月23日 6時起床 快晴 マンゴウとビスケットで朝食。千年の昔に栄えた王国の最盛期に造られた寺院の数々。その姿を遠く眺めながらチャイを飲む。もう少しのどかなこの村とすばらしい彫刻に触れていたい気持。しかし、時間どうり8時半にサトナ行きのバスが来た。熱い風景のカジュラホを後にした。

 昼12時 サトナ着。リキシャで駅まで行くとベナレス行きの列車に飛び乗った。どの車両も席は無く、通路も人で一杯だ。インド人はあっちへ行けと追い払う。疲れも手伝ってか、裕子がとうとう泣き出した。するとインド人もびっくり!今度はどうぞどうぞと席をつめてくれるではないか!マンゴウを分けてくれる人まで出てきた。インド人って本当はいい人が多いのか?

 夜中の11時 ベナレス駅着。駅にある休憩室のドミトリーを利用してすぐに寝た。ベッドも心地よく、シャワーも冷たい水で石鹸もちゃんと置いてあった。ひとり10Reだがこれなら安い。ベナレスは有名なヒンドゥーの聖地。旅は残すところあと3週間。旅もいよいよ峠だ。

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