第16話 学生さんごめんなさい

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 6月4日 9時バングラディッシュ航空のオフィスへ予約確認に行く。しかし、あの優雅なサリーの女性(15話参照)はまったくデタラメな月日を予約していた。『阿呆!!』とばかりどなりつけ、予約をしなおしてもらった。「きれいなだけの受付はいらん!」

 さて、家には1週間に1度ハガキを書いてはいたが一方通行。そこで家族には何かの連絡がしたい時にはと郵便局止めの連絡法を教えていた。中央郵便局へ行くと裕子のお母さんからしっかり便りがきていた。「こちらは皆な元気、旅を楽しんで下さい」と、書いて有るだけだが海を越えて来た久しぶりの日本語、うれしかった。

 「新婚旅行だろ、いいねえ」とニヤニヤして、ちょっとエッチなリキシャに乗せてもらいながら博物館へ向かう。こうだろ、ああだろと一人でジェスチャーして楽しんでる。気前良く20パイサまけてくれた。博物館では美しい細密画が印象的で日本画にも通ずる遠近法で描かれたものだ。例のマナリーで手に入れたコインは14世紀頃のものと確認できた。館内はクーラーがきいているのを幸い、昼寝までしてしまった。

 ホテルへの帰り道で2人の若いインド人が呼び止めた。ふたりは学生で、今度ヒマラヤに行くそうで、もし寝袋を持っていたら譲って欲しいとの事なのだ。「僕の寝袋は羽毛の高級品でゆずりたくない」ともったいつけたら、「いくらなら売るか?」ときた。「三百Reだ」とふっかけた。後で見に行くと去って行った。ほんとはだいぶ使い込んだ品物で3級品。まして僕たちの旅はこれからは熱い所ばかり。内心はいくらでもいいから手放したいのだが・・・夕食から帰ると学生が待っていた。ものを見せると半信半疑。「羽毛で温かで軽い」を連発する私。悩んでる学生にわざと小さなほころびを見せて、「250(約九千円)にするよ」と、出たらニコニコして金を出した。『しめしめ・・・』元の値段が1万円程度だから、大儲けというとこか。『学生さん、ごめんなさい!凍死しなければいいけど・・・』明日は丁度よくデリーともおさらばだ。

 6月5日 4時起床 夜明けのオレンジ色の太陽の中オールドデリー駅に向かう。通称ピンクシティ・エクスプレス。2等車両に乗り込むとすぐに席もみつかった。席は広く扇風機もある。今までで最良の汽車の旅だ。駅には素焼のコップに入れてくれるチャイ売りが来る。これがおいしい。インド人はこのコップをバンバン割ってしまう。景色は殺風景な連続だ。

 11時ジャイプル着。デリーから300Kmの宮殿や古い建築が多く残る町で、タール砂漠の入口に位置する。駅を降りるとリキシャマンの引きにあう。その中で日本語の書いてある手帳を見せるバブという名のリキシャマンを選び安ホテルを案内させた。手帳には世界各国の人の感想やサインが書いてあって、それを見せては信用を得ていたようだ。町では路上でのスイカ売りが多い。いくつものスイカに三角の穴が開いていて、どうしてなのかと思いながらひとつ買おうとバブさんを止めた。バブさんはすぐに察して物売りの親父と交渉を始めた。「テスト、テスト」と言って、なんと味見にスイカをナイフで三角に切り抜き食べさせてくれた。とてもおいしかったのでそれを買ったのだが、あのいくつもの穴あきだらけのスイカから察するに、味見だけで逃げる人が多いようだ。

 少し狭くて汚い宿だが、1日30Reの処3日間60Reで交渉成立。荷を下ろす。   60Re=2100円

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