第11話 インドの病気はインドの薬で

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仏陀入滅の地クシナガル

  5月7日 天井扇で冷えたのか、腹具合いが悪い。ゴーラクプルから2時間ほどバスに乗り、クシナガルへ。ここはブッダの入滅された処。バス停からは3q、バスもリキシャも無いのでひどい暑さの中トボトボ歩きだす。ルンビニーよりここは何も無い。乾いた道がだらだらと一本原野の中に続くだけだ。ブッディストミュージアムに立ち寄り、建造中の日本の寺院を横目に目的地へ。喉はカラカラめまいがする。
 大きな菩提樹のある塚にたどり着いた。その横に小さなほったて小屋があり、そこには腰布だけのサドゥがいた。彼は僕たちを手招きして、缶の中からなにやら白いかけらを出して、一つづつ手渡してくれた。口に含むとなんと、キャラメルのような甘くておいしい味。喉の渇きがとれてきた。サドゥのおじいさんありがとう!彼は小屋の入口に座って厚さが20pもある教典を読みだした。見たところ彼の持ち物はこれだけのようだ。2・3人、村の人か弟子か、それを聞いていた。

右上に木のベッドが揺れている

 菩提樹の裏に回ると、素焼の動物や小さなおもちゃの様な木のベッドが置いてあり、お線香が焚かれてある。『ああ、ここが亡くなった所なんだ!』何も無く荒涼とした、こんな寂しい土地で静かに目を閉じたなんて・・・そう思うとなんだか可愛そうな気持ちがいっぱいに湧いてきた。遥か昔に死んだブッダと言う人がとても身近で愛しい人に思えてきた。『しばらくここに座っていよう』風が菩提樹の葉をさーっと揺らしていく。『サドゥのおじいさんも、ブッダの事が好きなんだろうなー』この小さな塚の先に、ブッダの骨を埋めたと言う煉瓦で積んだ小高い塚があった。

 ゴーラクプルに戻り、再び駅で今夜11時のラクナウまでの切符を求めるが無いと言われる。むりやりインド式に乗るしかなさそうだ。

 5月8日 5時30汽車の中で日の出を迎える。通路で座り込みながらの夜行でかなり疲れたうえに下痢気味だ。7時、ラクナウに着く。近くのロッジに飛び込み休む。裕子に今夜の夜行のハルドワール行きの切符を買いに行ってもらう。僕は熱も出てきて寝たきりだ。裕子は悪戦苦闘、3時間もかかって切符を手にいれた。

 5月9日 8時30裕子が必死に車掌に頼み込み、寝台でハルドワールに着く。駅近くのホテルに落ち着く。ラクナウよりも幾らか涼しい。しかし体調はひどく、裕子も移動でかなり疲れたようだ。

 5月10日 熱と下痢止まらず1日寝ている。裕子は果物を買いに2度ほど外に行く。

 5月11日 熱と下痢が治まったが、ふらふら。
5月12日 裕子が下痢になる。5日前にちょっとすりむいた指の傷がひどく膿だしてきた。インドの菌は強いのだろう。ヨーチンを買って付けたら、幾らか良いようだ。

ヒンドゥーの聖地HARIDWAR ハルドワールが一望できる

 5月13日 朝は二人ともお腹が痛むようだったが、幾らか動けそうなので観光にでた。ここはヒンドゥ教の聖地で、川には沐浴する沢山の姿がみられる。高い山にはケーブルカーがあり、乗って行くと頂上には神様が奉られて有った。色粉や油でギラギラと飾られていて、日本人好みの神様ではない。
  5月14日 8時30発のバスでリシュケシへ行く。巡礼宿を見つけ、そこに落ち着く。二人とも疲れている。瓶底眼鏡の叔父さんが部屋の前をウロウロするのがうるさい。宿代は11Reと安い。


インドのチャイヤ
サモサやビリーも売っている
チャイは50パイサ程度
リシュケシでは散髪してもらった。気分はよい

 5月15日 リシュケシはビートルズも訪れた聖地、また始まった下痢を圧してアシュラムへ向かった。船で川を渡るとお土産屋もあり、観光地のようだ。青空床屋が有ったのでやってもらう。(4Re)川で頭を洗っていると、沐浴中のインド人が体全部入れろと、促す。とても冷たい水だ。  川には沐浴するサドゥ(巡礼修行僧)をよく見かける。ある年老いたサドゥが静かに川につかり、教典を読む。彼の持ち物は、水をくむ空き缶とずた袋だけ。インドでは今でもある程度生きたら、自分の持っている財産家族全てを捨てて、残された時間を巡礼の旅に出る。それが理想の姿とされているのだ。川辺に座ったサドゥの後ろ姿は静かで平和で、隣に座って、一緒に川の流れを見ていたくなるような気持ちがして来た。              

ハルドワールには馬車でのんびり・・・

 5月16日 シムラーに行くためにハルドワールに戻る。熱が出て下痢も始まった。同じホテルに入り、寝込む。

 5月17日 体力が限界にきた。裕子の肩につかまりながら近くの開業医に行く。家の軒先でやっていて、利き腕を骨折してる頼りない医者だ。処方箋を書いてもらい薬屋へ買いに行き、飲み方を教えてもらう。診察料10Re、薬12Re。ミルクはだめ、リンゴとブドウだけなら食べても良いとの事。大粒の薬4種類も飲む。果してその日の午後には症状も治まり、物を食べるとそれがぐんぐん力になるようだった。日本から持って行った薬は効かなかったのに、やはり場に従えと言う事か。

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