資料
脱炭素技術センターhttps://www.decarbonation-tech.com/tpower_13/ によると...
◆バイオマス発電の中止・撤退状況
2019年2月、日本製紙は秋田工場内で計画していた石炭バイオマス混焼の火力発電所(出力:11.2万kW)新設計画を撤回した。理由は十分な事業性が見込めないためで、バイオマス発電への参入が相次ぎ海外調達する木質ペレットや建設費の高騰が大きな影響を与えた。
また、2022年2月、日本製紙は山口県岩国市の自社工場敷地内でのバイオマス発電所(出力:11.2万kW)の建設を計画していたが、中止を発表した。大型船が入港できるふ頭に隣接し、木質ペレットや木質チップなどの燃料を輸入する計画であった。
2020年6月、日立造船は京都府舞鶴市で計画中のパーム油バイオマス発電所の事業撤退を公表した。事業主体である合同会社の撤退が直接の原因であるが、地元住民や環境団体は、騒音やNOx排出などの影響、アブラヤシの農園開発に伴う東南アジアでの熱帯林破壊を懸念して建設に反対していた。
2020年12月、三恵観光は京都府の三恵福知山バイオマス発電所(出力:1760kW)の廃止を公表した。アブラヤシの実から得られるパーム油を燃料に2017年6月に稼働したが、住民から音や臭気の苦情が出て裁判調停中であった。事業者は新型コロナ終息が見込めず、様々な観点からの判断と説明した。
2022年3月、バイオマス燃料の売買や製造を手掛けるバイオマスフューエルが、福井県坂井市のバイオマス発電所(出力:3.3万kW)の計画を中止した。燃料として想定していたアブラヤシ殻の価格上昇で、安定的に燃料を調達する見通しが立たないことが原因である。
2022年10月、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)関連会社のHISスーパー電力は、2021年1月に稼働したパーム油を燃料に使う宮城県角田市の発電所「HIS角田バイオマスパーク」(出力:4.11万kW)から撤退し、九州おひさま発電に売却すると発表した。
パーム油の価格高騰によりFITでの売電価格では採算が合わなくなったことに加え、インドネシアやマレーシアでパーム油が生産される際の環境・人権問題も原因とされている。
2022年12月、日立造船が運営する茨城県の宮の郷木質バイオマス発電所が一時停止した。内陸部に位置する発電所で、燃料を国産材の未利用材に限定している。しかし、未利用材は搬出困難な山の中にあるため高コストとなり、加えて輸入材が取り合い状態となり入手できないためである。
2022年12月、関西電力は、2016年12月に稼働した朝来バイオマス発電所(出力:5,600kW)の年内での事業停止を発表した。間伐等で伐採され森林内に残された未利用木材の調達コストが高騰し、新型コロナやロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけたためである。
以上のように、バイオマス発電での中止・撤退発表が続いているのは、一般廃棄物発電や産業廃棄物発電ではなく、木質バイオマス発電とパーム油バイオマス発電に関するものである。
◆バイオマス発電の抱える問題は?
無理な目標設定
経済産業省によると、国内で稼働するバイオマス発電所の総発電出力は約530万kW(2021年6月時点)で、政府はこれを2030年度までに800万kWに引き上げる目標を掲げている。
一般廃棄物発電と産業廃棄物発電の、いわゆる「ごみ発電」による実力は300~400万kWである。政府は残りの400~500万kWを木質と食品・畜産等によるバイオマス発電でまかなう無理な試算を行い、固定価格買取制度(FIT)で新規参入を募った。
バイオマス発電事業者協会によると、出力:1万kW以上の大型木質バイオマス発電所では、地元の国産材だけでは燃料をまかなえず、輸入材に頼らざるを得ない。しかし、輸入燃料価格の上昇が2020年後半から始まり、ロシアのウクライナ侵攻後の資源価格の高騰や円安が価格高騰に拍車をかけている。
その結果、大型の木質バイオマス発電計画の中止・廃止の発表が続いているのである。木質バイオマス燃料の価格高騰による採算性の悪化は改善される見込みはなく、調達すらできない状況であり、今後も輸入燃料を使う大型バイオマス発電所の中止・廃止が続く可能性は高い。
森林破壊を助長しない規制
ところで、2019年度から経済産業省はパーム油で発電した電力の固定価格買取制度(FIT)での買取条件として、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)認証の取得を要求している。森林破壊や児童労働などの問題が取り沙汰されるパーム油供給の持続可能性を担保するのが狙いである。
今後、RSPO認証取得の要求以前に確保していたパーム油で発電した電力は、FITで売電できなくなる可能性がある。先行してパーム油発電を開始していた発電事業者は、認証取得の猶予期限である2022年3月末までに新たな調達契約を結ぶ必要があったが、発電継続に必要な量を確保するのは困難であった。
このような森林破壊を助長しない規制と燃料費の高騰が、パーム油バイオマス発電からの撤退を引き起こしている。FITによる売電価格で採算が合わなければ、企業は撤退するのが当然の道筋である。このような認証と価格高騰はアブラヤシ殻でも始まっている。
早急な原点への回帰が必要
本来、バイオマス発電は地産地消の分散型電源として期待されていた。その本質を無視し、燃料を海外からの輸入材に依存して大型バイオマス発電を稼働させることを、FITにより推進した政府方針に問題がある。その後、森林破壊を助長しない規制などで、参加企業の首を絞めている。
一方で、欧州の環境NGOや研究者らは、木材を原料とするバイオマス発電は、すべて再生可能エネルギーの枠組から除外すべきだと訴え始めている。
木材を燃やして出るCO2を回収するには、燃やした木材と同じ量を植林して育てなければ持続可能にはならない。しかし、木材の栽培には数十年を要し、伐採、加工、輸送まで含めたCO2排出量を加算すると、「カーボン・ニュートラル」は成立しないという指摘である。
重要なのは、バイオマス発電の原点への回帰である。そのためには「国内林業の活性化」が不可欠であり、地産地消型のバイオマス発電を進めることでエネルギー自給率は100%となる。当然のことながら、地道な「ごみ発電」による発電量の増加(回収率向上、設備更新)の努力も忘れてはならない。
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以上のように多くの問題が撤退につながっているようです。
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1.バイオマス発電業界は「燃料高」で苦戦を強いられている!
2.業界に激震!「輸入バイオマス燃料」を使うバイオマス発電はFIT制度の対象外に!
「バイオマス発電」と言えば、再生可能エネルギーのなかでは、FIT買取価格が高く、収益化しやすい発電方法として注目されてきました。
しかし、バイオマス発電所の経費の約80%を占める「バイオマス燃料の調達コスト」が高騰しています。
ロシア・ウクライナ戦争以降、ロシア産の輸入木材を始めとする燃料の流通が滞りました。その結果、世界的にエネルギー価格が高騰したのは皆さんのご存じのとおりです。
日本の場合には、円安の影響も無視できないくらい大きなものとなっています。
【224億円の巨額赤字を計上した「鈴川エネルギーセンター」の稼働停止!】
2024年12月に報じられた「鈴川エネルギーセンター株式会社」の事業停止です(出典:Yahoo!ニュース「バイオマス発電事業の鈴川エネルギーセンター(静岡)が事業停止」)。
同社は、三菱商事エナジーソリューションズ、日本製紙、中部電力の3社による合弁会社として、2016年より、石炭火力発電事業をスタートしています。
2022年には「SDGs時代」の本格的な到来を予見してか、石炭燃料を木質ペレットとA重油を燃料とした「バイオマス発電所」に転換しました。
そして、2024年3月期には「138億円8700万円」もの売上高を記録するほど、業績が好調に推移していました。
ところが、バイオマス発電所に置換して以降、ロシア・ウクライナ戦争の長期化するなか、輸入木質ペレットを主な燃料としていたことで「燃料調達コスト」が上昇してしまいます。
その結果、「224億1900万円」もの巨額赤字を計上し、債務超過に転じてしまったのです。
発電所再開のメドは立っておらず。
これは氷山の一角にすぎないでしょう。
2025年1月 バイオマス発電に新規参入する場合、「1万Kw以上の発電所において、輸入バイオマス(ペレット、チップ、ヤシ殻)を用いる場合」および「アブラヤシから搾ったパーム油などの輸入液体燃料を用いる場合」については、2026年度以降より『FIT制度』の“対象外”とするという経済産業省の決定。
これまで、国内のバイオマス発電所は、70%ほどを輸入ペレットに頼ってきました。
その理由は至極シンプルで「輸入材の方が安いから」です。
そんな現状があるというのに、新規のバイオマス発電事業者に対しては「輸入材は使うな」と、経産省は宣告した。
ベトナムを始めとする輸入ペレットメーカーが、FSC認証を偽造した「粗悪なバイオマス燃料」を日本に輸入し、ボロ儲けし続け、国内のバイオマス発電所での「火災事故」にまで発展してきたこと。同社は今年度に入ってからの4~7月の4カ月だけでベトナム製の木質ペレットを約7万6000トン輸入している。
今後、新規参入を予定しているバイオマス発電所のオーナーに求められるのは「いかにして、国産のバイオマス燃料を安価に調達するか」という非常に難しいミッションの突破です。
このミッションをクリアしなければ、経営難に陥る可能性が高いです。