講師:伊藤千尋さん
2012/8/5深谷シネマにて講演
被災直後の陸前高田に行った。学校に命が感じられなかった。風景は広島の平和公園で見た資料の原爆直後の風景と同じだと感じた。消滅だった。
昨年の10月1日、原発から60kmの福島市の小学校の運動会を見に行った。運動会はたったの2時間。年間放射線量を超えないように外には2時間までしかいられない。みんなが転ぶころぶ!走りきって疲れてもおしりはついて休まない。土がつかないように言われているらしい。事前の相談では騎馬戦は落とされて土がつくからだめだとか、参加したくないとか有った。学校の牛乳ですら飲むか飲まないかでもめる。原発事故による大変な影響です。
他国のジャーナリストが言った。「日本人はなぜおとなしいのか?こんな政府に対し黙っているのか?ほっておくのか?」と
渡利地区の小学校は除染を何回もした。しかしブランコは使ってはいけない。板にしみこんだ放射能は洗い落とせない。板一枚除染できないのに、福島全域を除染だなんてできっこない。ある女性が毎日10マイクロシーベルト被爆していると言った。
御殿場では自衛隊の演習基地がある。日本の象徴の富士山に向かって砲撃する。地元の人は嫌だなぁと感じているが演習場として自治体に金が入るので、誰も文句を言わない。銭湯に必ず富士山があるのだから、ここに露天風呂を造って本物の富士山を見せてはどうかと提案した。「えぇ!?」と驚かれたが、できる策はある。
北欧のアイスランドには世界一の温泉があるのです。なんと地熱発電で利用した熱水を利用した温泉だ。色がきれいでブルーラグーンと呼んでいる。
日本の地熱発電はたったの0.3%。実は日本には原発20基分の地熱発電が温存しているという公的なデータがある。そしてその発電設備たるや富士重工、東芝、三菱が世界シェアをにぎっている。日本はなぜやらないか?政府が馬鹿だから。
ドイツのメルケルは日本の原発事故を見てすぐ17の内8つをとめた。そして、世界の再生エネルギーの先駆者になると言って脱原発を宣言。ドイツでは風力発電が盛ん。延べで沖縄県分の空き地に菜の花を育て、ベンツのディーゼルエンジンを動かす。
オーストリアではオイルショック後に原発を造り始め1977年に完成したが「使っていいのか?」と国民投票をして50.5%が使わないという結果がでたので、せっかく大枚使って造ったのに使わないことになった。さらには1990年、憲法で原発は造ってはいけない、使ってもいけないと決めた。どんな政権になっても原発は動かさないようにした。
日本の大間では「4割はできた原発をやめることはできない」と民主党の岡田は言い放った。この違い!ちなみにオーストリアのこの原発の周りには今ではソーラーパネルがびっしりと張り付いていました。
フランスはどうか?58基ある。サルコジも否定され原発を縮小することとなった。日本との違いは地震の発生カ所がほとんど無い。そこをよけて造ってある。日本はそこら中が地震源。そもそもこんな危険なところに造るべきではない。
イタリアやスペインはソーラーや風力。イギリスでは潮流発電を始めている。どれも日本でできる。国土は小さいが海を入れると世界第6位の広さがある。できる環境にあってなぜやらないか?政府が馬鹿だから。
スイスでは39%が原発。日本は30%。そのスイスで経済界から「保障できない。経済的に見合わないので原発はやめよう!」と言ってきた。日本の経済界は逆だ。
欧州から原発が消えてきているんです。
コスタリカでは女性大統領が「原発に未来はない。自然エネルギーのみしかやらない。地熱の技術は日本から」と明言。日本に来て企業に強く要請している。
フィリピンではどうか。地熱発電で世界第2位になった。フィリピンでは1986年に原発ができた。アキノ政権となった政府は人々のことを考えて、使うのをやめた。今では入場料300円で原発の中心部の格納容器までいける。中心部に行けるのは世界でここだけ。ここでも三菱の地熱発電設備を使っている。
ちなみにフィリピンではアメリカ軍基地をあっさりと追いやった。1991年にピポツボ火山が爆発したときに住民が避難する経路に基地があったが、米軍は門を閉めて通さなかった。国民は「アメリカはいざというとき私達を救ってくれると思っていたが全く違うことに気がついた」しかし、この基地では4万2千人が働いていた。が、悩むことはなかった。
それ以上に土地を使って農業、レジャー、産業基地を振興しようとなった。5年後には何と6万7千人が働いていた。今では10万人が働いている。日本ではそこで働いている人が居るからとかすぐ疑問にあげるが、フィリピンの前向きな姿勢は未来を見ている。
高知の梼原町に行きました。前町長中越さんと会った。わずか4千人の町です。風車を造った町。その前の町長が大赤字のフレンチレストランを造った。年1千5百万の赤字。レストランの名は「かざはや」。中越町長は山のてっぺんでは風が早いことが解った。風力をやりたいがお金がかかる。町の総意で決めないといけないと思った。そこで有志15人を募った。18歳から74歳まで。ヨーロッパに研修に行った。ドイツ、スイスに行った。そのメンバーは地域に帰って研修した内容を語った。住民投票をした。2億円かかるが風車をやろうと言うことで9割が賛成。町全体では3億の財政の中で風車をやった。四国電力には何度も相談し高い料金で買ってもらうことになった。なんと、5年で元を取りその後は毎年4千万円儲かった。環境基金を設立し、町民には1kwあたり20万円の助成をした。町も町民も潤うばかりだった。
実は震災1週間後に私は山口県上関町の祝島に行きました。30年、反原発をしてきた島です。そこで33歳の山戸タケシ君に会いました。「人口500人の島に、電力会社は10億円も出すと言った。反対はやめてくれと」島ではそれを断った。しかし、島民の1割の人は環境で飯が食えるかと言った。山戸君は言った「環境なくして飯は食えない!」と「僕はロマンで反対運動はしていない。自然エネルギーの島にしたい!」と。
生き方の先進国になろう!何のためのエネルギーなのか。ロサンゼルスに夜中に行ったら煌々と明かりがついていた。誰も居ないのにかっこいいからと。日本の夜中のビルも煌々と明かりがついている。人が働いていました。
浜岡原発のホームページを見たらびっくりしました。真夏の1週間のピークで電力が足りません。と、ならば、その1週間を休むようなことはできないのか?たった1週間のために原発を動かすのか?外国は夏はバカンス。方法はある。
(質疑の答えて)
日本の民主主義は実は機能不全です。この国に民主主義はできていない。議員も比例代表ではない。イタリアでは国民投票ですぐに方向が決まる。日本にはちゃんとした国民投票の仕組みがない。フィリピンでは市民革命でできた政府だから市民をちゃんと見ている。韓国では当たり前じゃないか!血を流して勝ち取った民主主義だと!日本は戦争に負けて与えられたものに過ぎない。コスタリカでは比例代表制。たとえば男女平等と決められているので22名も国会議員が居る。女性が40%以上居ることを憲法で決めてある。日本はいくら男女平等と言ってもそうなるように仕組みを作っていない。
日本のジャーナリストは一番困っている人を主体にしてない。意志を持ってはじめても8割が流される。国民が声をかけることが必要。まず隣の人に声をかけよう。コスタリカの首相曰く「1人で世界は変えられないが、1人からしか世界は変わらない」
(文面は田島昭泉の聞き書きメモお越しです。多少の内容違いはご容赦を)