秩父地域合併協議会設置議案に反対討論 03,9,24

■以下は豊田有善議員の討論です。この議案で反対討論をしたのは他に、田島昭泉議員、根登議員、高橋幸助議員。の4名です。

西秩父三町村合併を考える会Top


 議案62号 秩父地域合併協議会設置について反対の討論を行います。
反対の第1は、7市町村合併は小鹿野町への地方交付税は破滅的に減るという事です。
 減った交付税では現在の小鹿野町のサービス水準を保つ事は出来ない。町の活性化は図れぬ事であります。
 都市と地方とにおいて「均衡ある発展」の制度。その中核をなすのが普通地方交付税における段階補正の制度であります。
 人口10万人の市の段階補正分をゼロとし、それより人口が減るにしたがって段階補正分として幾何級数的に地方交付税が増額され、逆に、人口が10万人を超えると、割り落としという段階補正分としてマイナスの金額を課せられて、地方交付税が大幅に減額される制度です。

 7市町村が合併して人口約98,000人(98,718人)余り、地方交付税が約122億円。
 人口98,000人は、段階補正分ゼロの人口10万人の市に限りなく近い市であります。新市の地方交付税はどの位になるのでしょうか。
 国の方針では、合併後10年間は現在の交付税を保証し、以後5年間で、合併後の新市の交付税に算定替えしていくというのが、地方交付税の扱いであります。
 助役を中心とする合併研究会の合併算定替えの段階的に減らす案は、合併後11年目より年5%、5年間で25%減らすことになっています。
 25%減ると、122億円が31億円減って91億円になります。しかし、果たして91億円は確保出来るでしょうか。私は確保出来ないと思う。
 私たちの研究会では、次のような数字を示します。
 小鹿野町に限っての数字ですが、仮に9市町村合併の場合、小鹿野町の地方交付税は、教育費の減額分5,328万円、減額割合40.7%。高齢者保健福祉費の減額分6、769万円、減額割合27.8%。消防費の減額分7,430万円、減額割合35.9%。その他の減額2億9,413万円。合計4億8,940万円、全体の減額割合は32.8%となります。
 大変な数字であります。
 秩父7市町村合併でもこの数字と差ほど変わらないと考えます。

 この段階補正分4億8,940万円、約5億円が減る事は次に何が考えられるでしょうか。
 この5億円を自己負担分とする事業が出来なくなりますから、起債を返すときに国からもらえるはずの、これと同額以上のお金がもらえなくなる。その結果、5億円の2倍ないし2.5倍、即ち10億円から12,3億円が減る事になります。

 ここ近年の国の段階補正は厳しい。
 決算審議で課長から次のような答弁があった。
 平成14年度から3年間、年1,700万円、3年間で5,100万円の減額と。小鹿野町の財政は大変厳しいと。
 しかしそれ以上に、7市町村合併をする事によって普通地方交付税の大幅な減額を覚悟しなければならないのです。

 新市になって地方交付税はあきらかに、大幅に減ります。
 大幅に減った交付税は、合併市の中で取り合いとなり、当然に人口の多い、力の強い中心部に沢山使われる。ですから、周辺部への使われるお金はもっと少なくなる。
 その事は残念ですが当然の流れであり、合併した市町村でどこにでも見られる例であります。
 「合併の是非は現実に合併した事例をみればわかる。全どの場合、合併した結果は悪くなっている。また、中心部に力が入れられ周辺部はさびれている」と。
 秩父7市町村合併は秩父市が中心。小鹿野町は人口からいっても五分の一の周辺部。
 地方交付税制度で、当然国から受け取れるお金を大幅に減らしてまで、7市町村合併する意義があるのでしょうか。
 町はこの点について十分な説明をしてきましたか。
 結果は残念ながら否であります。

 町の合併に対する説明において、大きく欠けていたのが合併特例債の説明です。
 今回の市町村合併において、アメとなるのが合併する事によって借金ができる合併特例債であります。

 新潟県加茂市のインターネット・ホームページの中に「広報かも別冊 国を亡ぼし 地方を亡ぼす 市町村合併に反対する 加茂市が県央東部合併に加わらない理由」があります。
 東京大学法学部を卒業し防衛庁のキャリア組。局長で退職し、新潟の小京都といわれる人口33,700人の加茂市の市長さんになって3期目、小池清彦市長さんがお書きになり全国に訴えておられる、「広報かも 別冊」の中に次のようなくだりがあります。

 『合併特例債は使途が制限され、合併市が返済する時に3割を負担せねばならぬうえに、起債制限比率の制限があって通常これを使うことは殆ど不可能であります。
 平成17年3月までに合併すれば、巨額の合併特例債が使えるので早く合併すべきという考え方が相当流行しています。
 合併特例債というものは途方もないもので、通常、合併市の一年分の予算に匹敵し、あるいは、合併市のこれまでの借金(起債)の総額に匹敵する額の起債が新たに認められるというものです。
 しかし、合併特例債は通常これを使うことは全ど不可能なものであります。
 それは起債制限比率というものがあるからで、これが15%を超えないようにしなければならず、20%を超えると、国と県から厳重な注意をうけます。
 ところが、多くの市町村では、住民の幸せのために15%ぎりぎりのところで財政運営を行っておりますので、現在の規模を超える起債はできません。
 去る14年11月14日、全国市長会理事会において、総務省の事務方のナンバー2である香山総務審議官は、私の質問に対して、「起債制限比率は守ってもらわなければなりません」と明確に答弁しておられるのです。
 すなわち、合併特例債というものは、馬の鼻先につるされたニンジンのようなもので、食べようとして食べることのできないものなのです。
 しかも、この合併特例債はどんな事業に対しても認められるものではありません。合併することになって必要となるもの、例えば、巨大な市役所のようにごく限られた、新たな財政的に重荷となるようなものに対してのみ認められ、しかも、その3割は市町村が負担しなければならない危険なものであります。』
というくだりがあります。

 合併してから10年以降に急激に減る地方交付税を考えれば、さらに安易に合併特例債は使う事は出来ない。
 容易に予想されるところです。

 町長は7月18日の倉尾地区の合併説明会において「合併特例債はどのように使う考えか」の質問に対して、「合併特例債は、長尾根トンネル、一本杉トンネルを入れておけばこの位は使えると思う」と答えておられる。
 思うという疑問詞で結んでいるとはいえ、この発言は重い。これからの町づくりの夢を町民に語った事とて、自らの政治生命をかけてでも実現すべきであります。
 今後、これらを含め合併特例債については事務方はもっともっと勉強する事。
町民に対してもっとわかり易く、しかも、十分に説明する必要があろう。

 次に、町民による自主管理の住民投票の結果、そして、任意協議会の意識調査の結果について申しあげます。
 「住民投票の結果は参考にする、しかし、相手がおり総合的に判断する」というわけの判らぬ町の姿勢であります。
 そして、しかも、住民投票が終わった直後の8月26日に吉田町、両神村に町長は出向き(議長も一緒だったようだが)聞きもれる言葉を総合すれば「7市町村合併を今までどうり進めるから」と伝えたという。
 この言葉、余りにも町民をないがしろにした行動ではないか。翌27日の議会全員協議会にはこの事は、何等ふれずじまいだった。
 こんな行動がよく安易にとれるものだ。後に議長にきけば「たいした事は話さなかった」という。大した事は話さなかったというが、町民をないがしろにした行動が許せないのである。

 合併枠組みをしっかりしてから、合併協議に入るのが自然であろう。
 住民運動の中でも、(議員の)議会活動の中でも、早く住民に問うてという事で合併枠組みについての住民投票を要求してきたが、町長は早期実施を拒み続けてきた。
 それならば、住民自身で「枠組みを問う住民投票をしよう」という事で立ち上がったのが自主管理の住民投票。
 7,8年前に連日全国に報道され、住民による原子力発電所建設の是非を問うた住民投票。その新潟県巻町を視察、研修したのが6月末でした。そして、住民投票は8月24日でした。
 2ケ月もたたないで住民投票が出来たのです。
 何がそうさせたか。先にたっての役員さんの行動はもちろんです。
 しかし、町民のこの町、この小鹿野町を思う愛郷心がなければとても実現できるものではありません。
 この経済の厳しい時に短期間で1,000万円ものお金が簡単に集まりますか。金額の多少はとわず、また、町外の多くの方々からもお寄せいただいた浄財をあわせ1、000万円にもなったのです。
 準備も投票も夏の暑いさ中です。14の投票所、不在者投票所、巡回不在者投票車、開票と、それを取り仕切った投票管理委員会。併せれば200名にもなる大勢の方々の貴重な労力奉仕がされて出来たのです。それが、まぎれもない事実なのです。

 私は新潟県巻町の視察から一緒に住民投票の準備を行ってきました。
 そして、8月16日から23日の8日間、一日も休まず朝から夜の7時の終了まで不在者投票所に立ち会いました。8月24日も投開票をはじめから終わりまでかかわりました。
 町民の皆さんが、複雑な思いで自主管理住民投票を行っていただいた事も事実でしょう。
 そんな中、不在者投票所に足を運んでいただいた方約700人。その中で若い人の多かった事。体の不自由な方で「合併は他の選挙よりも大事だから投票する」といって投票された方など特に印象に残っております。

 結果は投票率54.79%、三町村の合併に賛成が4,306票(81.86%)、7市町村合併に賛成が874票(16.61%)となりました。
 この結果を重く参考に出来なくてどうしますか。参考にして施策に生かせなくてどうしますか。

 続いて発表になったのが任意協議会の意識調査の結果であります。
 「もしも合併するとしたら、あなたはどの合併パターンがのぞましいと思いますか」の問いに、西秩父三町村の小鹿野、吉田、両神の合併の枠組みは、意識調査の枠組みにはなかったのです。しかし、西秩父三町村合併が三町村同じように一位になりました。
 三町村合併の設問があれば、この数字よりさらに上がった事は容易に予想できます。
 三町村は一つにまとまろう。一つに合併しようというのが住民の多数の意見です。
 先日の私の一般質問で、「合併が必要、どちらかといえば必要と答えた方は7市町村が多数を占めたから一概にいえず検討を要する」旨の答弁がありました。
そのような答弁は、三町村小鹿野、吉田、両神の合併枠組みの設問を設け、その結果をふまえてからすべきです。

合併問題のこの一年を振り返ると、何とも整理のつかない重い気持ちになります。
 例えば、小鹿野を中心とした吉田町、両神村の西秩父三町村。
 昔から地理的にも一つ、歴史も文化も経済も、そして行政も一つになって補うところは補い、助け合うところは助け合ってきました。
 しかし、この合併問題はぎくしゃくした流れで、素直な流れとなって必ずしも進んでこなかったのではないか。

 昨年10月4日の文化センター。西秩父経済懇話会主催の西秩父三町村長が語る「市町村合併問題講演会」がありました。
 三町村の首長の話を要約すると小鹿野町の福島町長は、「秩父が一つになればいいと考えている。合併は町づくりだ。これからの秩父を作ってゆかなくてはならない」と。
 吉田町の猪野町長さんは「行政は地域の最大のサービス産業、広すぎるとそんな山奥からはおりてこいとなる。雪が降っても、そんなところはいくらでもあるといわれ掃きにきてくれなくなる。昔からのつきあいの西秩父をまづ考えて」と。
 両神村の千島村長さんは「慎重に考えたい。住民の意見は聞いていないが、西秩父(合併)なら住民の皆さんにも重い話ではないと考える」と。
 一年たって福島町長のお考えの秩父郡市7市町村合併に進もうとしている。
しかし、福島町長は「秩父は一つ、これからの秩父を作っていかなくてはならない」というが、では町長どうするかと問えば、「合併協議会で考えていく事、詰めていく事」といわれる。
 町長は町長自身のお考え(秩父は一つという町づくり)を、もっともっと町民に対して話す必要がある。強い、熱い想いを話す必要がある。
 「市長に立候補して荒川より小鹿野側に市役所を・・・」という私の一般質問の最後の質問にも、熱い秩父づくり、西秩父づくり、小鹿野の町づくりを語る事はなかった。私は町民の父、母たる町長の熱い想いを多いに期待しての質問だったのです。

 私は、21世紀へのキーワードは、環境であり、地域であり、農業であり、個性であると考えています。
 21世紀は自分を振り返り「個」、「個人」が存在するための基盤である環境、地域、農業をとうしてあらためて個人を見直し、尊重しなければならない時代になれのではなかろうか。
 そうした中で今後考えられる事は、「都市」部との交流であります。
 この交流こそが、地域を、経済を活性化させるための最も重要なポイントになります。
 そして今その交流を最も必要としている地域が、私どもの住む地域、いわゆる中山間地であり過疎地域であります。町長は、この交流という事を全面に出す施策の展開が必要であります。
 わたしどもの地域は、人の身体にたとえるならばいわば毛細血管。人の身体も毛細血管の隅々まで十分な栄養分と酸素(空気)が入った血液を送りこまないと、やがて、壊疽を起こしひいては身体全体が駄目になる。
 7月の講演会で上野村の黒沢村長さんは、ご講演の冒頭に「都市だけ栄えた国家はない」とのべておられました。
 今、東京は品川駅の再開発、六本木ヒルズのオープンなど、どうして東京はこんなに開発が出来るのだろうかと思ってしまいます。
 東京都市圏だけ栄えて、地方といわれる私どもの山間、過疎地が活力を失うようであってはならない。
 しかし、市町村合併は都市が栄える政策であります。
 秩父7市町村合併は、まず秩父ありきで、秩父市中心のまちづくりが行われ周辺部はさびしく、さびれていく。まさに、この合併であります。

 国の地方交付税制度、合併特例債、何よりも7市町村を否とする、反対とする町民の大意、そして今後の時代を考えると、7市町村合併に反対し、法定協議会設置の本議案に反対します。

 議員皆様のご賛同いただくことを切にお願いし反対の討論といたします。
                  (以上   豊田有善議員の討論)


 議案62号 秩父地域合併協議会設置の議案は賛成7、反対7の同数となり議長裁決は可決で可決された。