第27話 とうとう盗られちゃった 

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  7月13日 5時起床 今日はインドとおさらばする日だと言うのに、裕子は熱が出て下痢もして具合いが悪い。『ここで、置いてかれたら大変』と、精神力とレモンティで裕子は病気と戦った。

 8時半 同じ便で帰国の毛登氏と共にタクシーに乗り込む。30で行くと言うことで3人割り勘にした。ダムダム空港へびゅんびゅん飛ばすタクシー。スピードメーターは壊れていて動いていない。ドアもガタガタと外れそうだ。思えばインドで始めてのタクシーだ。そんな中でも裕子は何とか快復してきたようだ。牛が引く荷車。荷物を頭に乗せて行く人。チャイを飲み憩う人々。窓にはインドの風景がなつかしく映る。空港に着くと運ちゃんは「荷物が多いから、あと5Reだせ」ときた。何とか2Reに負けさせて空港に入る。負けさせるのは、もう慣れっ子だ。

 バンコク行きのバングラデッシュ航空BG692便の受付はもう始まっていた。この便は1泊のダッカでの宿泊付きだ。出発までの数十分を、残りのルピーを使ってコーヒーを飲み感慨に浸った。今日は旅に出てからちょうど百日目である。病気には最後までいじめられた。何でも値段をふっかけられたし、だまされもした。おいしい果物や料理。親切にしてくれた人。けなげに働く子ども達。気候の激しさ、地形の雄大さ。カラフルな民族の個性・・・とても豊かな時間だった。

 夢心地の中、いよいよ搭乗。しかし、ボディチェックの係の人にバクシーシー(物乞い)されたのには驚いて目も覚めた。飛行機は横に5人座りの小型のジェット機だ。客も半分ほどしか乗っていない。荒れ地に点々と緑の続くインドの風景が小さくなる。『さよなら・・・』


バングラデッシュ上空 水浸しの村々が見えた。

 1時間もしないうちに、水浸しの風景が見え、バングラデッシュのダッカに着く。空港の荷物係の人までバクシーシーでうるさい。リムジンカーでホテルに着いたのは2時半。ホテルはさすがに航空会社が用意しただけの事はある立派なもので、クーラーやホットシャワーもあり、裕子もご機嫌だ。しかし、これも束の間の喜び。荷物を新めて見ると、裕子のリュックから日本円で3万円が盗られていたのだ。僕の方はボールペンが盗られていたが、現金などは身につけていたので大丈夫だった。何とも信用ならない航空会社だ。「今までこんなこと無かったのに!」

 3時半 用意された遅めの昼食を食べながら、他の日本人と荷物荒しの事が話題になった。毛登さんはリュックの口をヒモでぐるぐる巻にしていたので大丈夫。もう1組の日本人の女性の荷物も開けられていて、手紙の中まで開けられていてクシャクシャだったそうだ。

 ニュウマーケットに出て見たが閉まっている店が多く、特に興味を引くものもなかった。


ニューマーケットのマンゴゥ売り

 7時半 ディナー しっかりした西洋料理を頂く。毛登氏、高田氏、よう子さん達と共に遅くまで話し込む。旅の事、今後の事。皆、夢がいっぱいだ。


リキシャの中は未来都市の絵が描いてあった
(パンク修理中)

 7月14日 7時起床 快眠できた。朝食後は毛登氏と共に観光に出かけた。リキシャをひろいガート(沐浴所)城跡など見て歩く。聞いたところ昨日と今日と「キリスマス」の祭だと言うことで休みの店が多いようだ。

SADAR GHAT

 11時半 リムジンに乗り空港へ。運ちゃんは時間が無いとばかりにすごい飛ばしかただ。トランジット客はすぐに搭乗ロビーに入れた。免税店でも何も興味を引くものもなく、残りのバングラデッシュ通貨、30タカでミルクを飲んで、慌ただしく機内へ行く。機内は相変わらずすいていた。

 2時間半後タイに着く。高田氏とよう子さんのカップルと共にタクシーにてホテルへ。プライバシーホテル1泊188バーツ。近くの定食屋で夕食をとり、マレーシアホテルのいかしたカフェでのんびりくつろいだ。バンコクはさすが進んでいて店内で「二〇〇一年宇宙の旅」のビデオを上映していた。一遍に現代にやって来たようで面食らってしまうようだ。

 7月15日 7時起床 朝食もおいしく頂き、外に出た。なまずを焼いて売っていたり、臭いのきつい出店をのぞき歩いた。どうもバンコクの郷土食は手を付けるには勇気がいる。


ランプゥタン、ロンガン、マンゴスチン、カスタエプル、どれもとても甘い果物達

 11時半フロントに荷物を預けて悪名高き(?)パッポン方面へ。土産物はどれも高く面白いものは無し。くだもの屋に並ぶ数々の奇妙な果物が目に留まった。ひとつずつ買って試してみた。いやと言うくらい甘いものや香りのきついものなど、世のなか面白い味があるものだと感心した。あやしげな女の子がうろうろするカフェバーでビールを飲みくつろいだ。          

 夜9時 高田氏らと共にタクシーにて空港へ。コーヒー飲んでひと休みしていると、高田氏らとジャイサルメールで会ったと言うみち子さんとも合流。パキスタン航空の受付に行くと、あのダラムサーラで会ったアッチャーさん(のりさん)とサビーナさん。「アッチャー」とばかり手を握りしめての再会。

 飛行機は悪天候で1時間以上遅れ離陸した。

 7月16日 午後1時半 成田着 僕らとアッチャー氏カップル、みち子さんの5人はスムーズに出国。しかし高田さんの連れのよう子さんはなにやら水パイプを所持していたとの事で出てこない。仕方なく5人は電車に乗り都内へ。小刻みな時間の流れ、無表情で忙しい人の流れ、美しすぎる車内。インドとはかけ離れている。親切な車内放送にも皆で大笑いするほど、僕らも日本の文化にショックを受けた。

 盆の送り火を焚く裕子の実家で、刺身、そーめん、焼鳥、さやえんどう・・・と、日本の食事にありついた。

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