第3話 人を信じよう(ネパール)

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 小さな丘を切り開いたような空港に降り立ち、ロビーで荷物がくるのを待った。係の人がカウンターまで運んでくれるのだが、のんびりしていてなかなか来ない。結局チップを払うと持ってきてくれる事に気が付いたのは、乗客の最後の方だった。税関はYES.NOだけで簡単に外へ出ることが出来たが、外はどっぷりと暗闇の中だった。カトマンズの街へは4q、不安な僕らをあざ笑うかのように、タクシーの運ちゃんが3人ほど寄ってきてべらべら喋りまくった。ぼられてはいけないと「バスに乗る!」と言い張り、付きまとう運ちゃんを避けながらあっちへウロウロ。こっちへウロウロと行ったり来たり。すると「1ルピー、ミドルバス」と言う人がいてバスストップ(バス停)を教えてもらった。親切な人もいるものだ。しばらく待っていると、青い帽子をかぶったチベットの男の人が、「どこへいくんだ?連れて行ってやる」と言うような意味の英語で話しかけてきた。彼はなかなか達者な英語でペラペラと話してくるが、こっちはチンプンカンプン。バスに乗り、車掌にお金を払おうとすると、彼が払ってくれた。どうなちゃってんの?彼は悪い人で、僕たちをどこかへ連れ去ろうとしているのではないか?不安は人を疑い深くする。「ストーンロッジへ行くんだ!どうしても行くんだ!」しつこいくらい彼に主張した。バスから降りて彼は先導するが、僕たちは道行く人に「ストーンロッジはこっちか?」と確認するが、それもらちが明かない。軒の低い崩れたような民家。白い目だけ浮き立つ、薄汚れた布をまとった人。二人は混乱した心のまま、しかしなんと着いたのです。青帽子のチベッタンはチップを要求するでもなく、握手と笑顔を残して去って行ったのでした。『疑ったりして後免ね』・・・二人は大混乱のうちに、狭くて迷路のような通路と階段を抜けた四畳半程の部屋の硬いベットに入ったのでした。

 ・1$=14.2Re(ルピー) 1Re=17円

 ・ネパール人は彫りが深くインド人に近い。チベット人は日本人にとても良く似ている。

 4月8日 6時、鳥の声も大きく、なにやら、もう街の活動は始まっているようだ。朝食を取りに外へでる。道から一段下がった薄くらい空間に、なにやら人がひしめいている。『ははあーこれがチャイ屋か』と中に入る。膝を突き合わせるように座り、湯気のたつチャイと棚の上の小さなパン、ゆで卵を一つ頂く。(二人で5.25Re) マ・ジャパニ・ホ(=私日本人です)とかメロ・ナム・タジマ・ホ(=私の名前は田島です)のネパール語を早速使ってみて反応を楽しむ余裕が出来た。ロッジの周りを歩いてみると、街の家はほとんどがレンガを積んで、素焼の瓦を載せただけの物だ。二人の泊まった部屋は5階で、よく倒れないと思うほどの造りだった。最初のネパール観光は、飛行機の中で知り合った、ジバン氏が案内をしてくれる約束だったので彼を待ったが、1時間が過ぎても来る気配もなく、二人で観光に歩きだした。ネパールの野菜やさん

 スワヤンブー(通称:目玉寺院)を目指して、地図を頼りに歩いていく。途中、シバ寺院のある広場には土産物屋が沢山有り、「見るだけ!見るだけ!」(日本語)と、しつこく誘う。なにやらこの国の神様か?色とりどりのお面やブロンズの置物、毛織の袋物、セーター、曼陀羅の壁飾り・・・所せましとならんでいる。「ナイス・ナイス。ベリーチープ。」切望するような目付で、売り込んでくる。驚いた事に、道を歩いていると小さな子供が「両替!ハッシッシ・マリワナ」と付きまとう。この国の貧しさとたくましさを感じた。また街中には、至る所に犬、鶏、白い長い角の牛、アヒル、山羊など、自然に人と共存しているようで、人と動物は家族なんだと、なんだかうれしくなった。吐き出しの玄関からゴミを吐くと、どこからか小鳥や鶏がやってきてついばむ。残飯や紙屑はや山羊が片ずける。街の掃除やさんがいるわけだ。お負けに牛のしていったふんはその家の壁で干され、燃料となる。いちおう持ち主は居るのだろうが放し飼いで、時には乳も絞られ、持ちつ持たれつの感じ。街の中を牛が歩く

 街を出るとのどかな農村風景。小さな女の子に微笑みかけると、はずかしがって逃げちゃうのがかわいい。吊り橋を渡り、猿もいるスワヤンブー。小山の上の寺院の境内で一服していると、「アローアロー(ハロー)」と話しかけるネパール人が来て、ペラペラと変な英語を使って、手相を見たり、寺の中まで案内してくれたり、タントラの言葉を教えてくれたりとやたら親切。バス代を払ってくれたあのチベット人の事を思い出した。お礼にコーラをおごって帰ろうとすると・・・「神様に果物を捧げるから、2ドル払え」と言う。泊まっているホテルが約1ドルだし余りに高い。「ドルはない!」「じゃあ20ルピーはらえ」「こまかいのが無い」「じゃあ、くずせ!」向こうも引き下がらない。いい人だと思ったら押売ガイドだったのだ、・・・仕方なくガイド料と言うことで、5ルピーあげたら、「アイム。・アン・ハッピー」だって!。以後名所、旧跡では気を付けることとする。・・・だけどもっと大きな心で対応できればなんて思ったり・・・信じ切るってむずかしい

 夕食にエッグカレーやダルバー、屋台でサモサとポテトのカレー掛けを食べて帰る。やたら珍しい物を食べたくなった。

押し売りガイド

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