序章

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 なぜインドに引かれたのだろう?原始美術に興味を持ち、宗教絵画に目が向いたとき、その共通項である曼陀羅的世界の表現に大きな感動を覚えたのです。特に仏教美術の持つ多彩な宇宙表現に引かれたのは言うまでもない。そして、ある時私の描く絵を見た人の「インドに興味をお持ちですか?」の言葉によって、インドへ行こう・・インドへ行かねば・・・となったのである。

 とはいえ、結婚してまだ1年目。海外旅行は未経験。お金もない。妻の裕子はしかし、私の強いインドへの興味を知って協力してくれることとなったのである。 さてそれからは1年間、二人せっせとアルバイト。インドの資料集め、パスポートの取得、と着々と準備を進めた。しかし、安いチケットを探しても、往復で一人最低36万円!(当時のレートは1$=240円)となると、二人で百万は貯めねば!・・・おのずとアルバイトにも力が入った。

 インド。ネパールとなるとコレラや肝炎の予防接種も受け、ビザもそれぞれ大使館へ申請に行った。インドの大使館では小さな事務所にサリーを着たインド人がいて、少しだけインドが身近になった気分であった。

 カーストによって差別される世界。地球上で一番貧しいと言われる不可触餞民。反面大富豪・マハラジャの存在。偉大な仏教が生まれたが、しかし今はその面影もないと言うインド。ビートルズやサンタナが修行に行ったインド。無抵抗・無謀力主義で自由をかちとった、ガンジーの生まれた地、インド。いったいインドは僕ら二人をどの様に向かえてくれるのだろうか?


Raga Deepak
Mewar school,1650
デリーの博物館で見つけた絵はがき

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