後期高齢者医療制度と国民健康保険のメタボ健診


先の衆議院選挙で民主党政権になって「後期高齢者医療制度」は12年度末には廃止し新制度へ移行することで検討に入りました。
(長妻昭厚生労働相10月8日報告 埼玉新聞2009年10月9日):田島昭泉の任期10月末までの中でこの発表があったのはうれしいことです。
以下の意見書のように欠点をまとめた物は他HPにもありませんので是非、参考にして下さい。


後期高齢者健康保険廃止の意見書を可決 2008/6月議会、日程第4日の19(木)

田島しょうせん意見書発議の時の議会壇上での説明要旨 →実際の議事録

 3月議会で不採択となってから3ヶ月。この間、私がとらえた問題点はなんと10点ほどあります。結果としては修正では間に合わないので、廃止しか無いと感じ、廃止の意見書としました。

1●75歳を境にして別枠にした。なぜ分けたのか?
 この保険は、はじめ現役世代の負担を緩和し高齢者にも応分の負担を求めるのがねらいだとはっきりと言ってます。若い者に高負担にならないように、75歳以上の人はその人達で自分たちの保険をまかないなさい。と言うことです。
 昨日の高根議員の答弁にもありましたように、今までの保険制度の中では確かに75歳以上の方のぶんの50%も若い人が負担していた。それが分けられて40%になったとのこと。少なくとも10%分はとりもなおさず、同じ医療ならば高負担になるし、同じ負担なら医療を薄くしないとまかなえないことになるということです。
 家の中で言えばおじいちゃんおばあちゃんにはご苦労様と若い者が面倒見るのが当たり前。それを「あんた達はこれからは自分で見なさい」と言っているのと同じで、年長を尊敬する日本人としても別枠にしたことは残念でなりません。
 あえて言うならば国保の中で配慮をすればいいものを、この75歳以上を分けた点が一番不適切なことと思われるので、細かな修正などをしても傷は大きく残ると言うことです。

2●この保険は「一般的には低所得者で負担が減り、高所得者は負担が増える」と今まで言っていたものが6月発表の厚生労働省の新たな調査ではまるで違ってきたと言うことです。全体で31%が負担増になる中で、低所得者、たとえば177万未満の世帯では39%が負担増。177〜292万円の世帯でも25%が負担増。と低所得者で負担が増となる。
 昨日の高根議員の質問の中でも小鹿野はまだ特例がきいてはいても低所得者で増額となる事が明らかになっています。(ちなみに小鹿野の特例の減額は、はじめの2年は15%、次の2年は10%、その次の2年で5%ですが6年たてば同じ金額になると言うことです)
良く精査もしないで低所得者では減額されるなどと報告していたことは国民を欺いていたと言うことだと感じます。
 そして先日、低所得者で高額になってしまった分を改正してすぐに修正しますと政府は動きました。さて、ではその減額分は誰が負担するのでしょうか?6/7付け新聞によると、このことでは他県を含め埼玉県の広域連合からも国へ緊急要望書を出しています。「ギリギリの運営をしている県や、市町村ではその分は負担できない。国が全額負担を」と要望が6/14日に出したことからも、修正などと良いことは言いながらその財源も明確ではありません。
 激減緩和措置があるという事自身が物語っていることは確実に高くなりますと言うことです。
 何よりもはっきり政府が言っていることは毎年2200億円を福祉から削減すると言う方針がある以上、事は明確です。
 昨日、高根議員が言うように国会議員の高所得者では6万円下がり、天下り法人で800万以上の収入の人は9万円も減になるという話も、きめ細かな配慮どころか、いいようにしたとしか言えません。

3●担当医(かかりつけ医)を一人決めると言うことです。主なる病を元に主治医をひとつ決めろと言うことです。患者も特に高齢になるとひとつの医療では済まないこともあるのです。極端ではありますが、このことで患者はいつでもどこでも病院はフリーに選べるという自由を奪われると言われています。
 病院間でうまく連携していたものにも亀裂が入る。自由な診療を阻害するものだとして、埼玉県の医師会でもこの登録制度は自粛を呼びかけており小鹿野もこの制度適用を自粛しています。
4●この担当医では1ヶ月、1診療所、600点すなわち、1診療所での診療や検査が1ヶ月6000円という定額だと言うことです。1割負担の600円で済むからと安心してはいけません。これはとりもなおさず、検査を制限することになると思われるからです。何しろ、複数の検査や高額の検査等をして6000円を超える検査をすると医師側の負担になるからです。逆に安い検査をすれば差額は儲かると言うことです。医師がどっちへ転ぶのかは知りませんが少なくとも、経営を圧迫するような方向に行かないことは明白です。
5●さらに関連するのが、人間ドックに国3分の1の補助が出なくなった点です。小鹿野では今まで通り受診者には補助してゆく姿勢ですが負担が大きくなった訳です。埼玉県でも65市町村の内、補助金が無くなったのでやめたのがほとんどなのです。わずかに5つの自治体が現状維持しているようです。入間市、横瀬町、長瀞町、小鹿野町、大利根町のみです。1診療所での検査6000円で定額にしてそちらで見て下さいと言うことですが、先ほど申したようにこの制度では満額の検査6000円分をしてくれるかどうかも疑問です。

6●終末期医療相談支援料です。これは何かというと、余命3ヶ月とか1ヶ月と宣告された時に終末医療として、延命などはするとかしないとかと文書やビデオなどで記録することで、まるで遺言のようなものを作って2000円の支援料が医師に払われると言うことです。これも県医師会では算定しないと決めております。医師であれば終末期に本人や家族には相談して、誰もが満足行く終末医療を決めてゆくのが当たり前なのです。尊厳ある死を目前にその事に報酬をつけられたことで医師は憤慨しています。
 まさに余計なことに金銭が使われるのです。こんな事で仁術だったものが金銭になってしまうのです。「医療現場で働いたことのないものの発想だ」と松本の医師も6/7の読売新聞で論文を載せています。
7●これに似た制度で考え方の相違はあるものの、浅ましいと感じたのが昨日も出てきた「後期高齢者退院調整加算」です。こは長い入院患者の退院成功時に医療側に1000円の報酬があると言うことです。これは長い入院患者は介護にでも入って頂く計画だとは思いますが、医療リハビリから遠のく可能性もあり、身体的には後退する可能性も大きいのです。完治させたら報酬がもらえるならまだしも、何しろ長い入院患者を切りをつけさせて退院させて報酬がもらえるという事自身あさましい報酬制度と感じます。

8●一時的に金銭負担が重くのしかかる「資格証明書の発行」。これは支払いが1年滞った者は、次の医療は100%支払わないといけない内容です。財産を持っていて払わないものには厳しい措置は当たり前としても、この制度が弱者に及ばないとは言い切れません。

9●年金から自動で引き落とされ手元に少なくなって届くという事自身。とる側からだけの考えでしょうか、何か大変寂しく感じます。

10●国保の中でできなかったのか配慮もできるものであったと感じます。小鹿野ではお年寄りに寝込まないような元気なお年寄りを目指して、きめ細かに管理して運動させて努力して、医療費を減らすことにも成功している中で、県などの平均にならされての医療費になってしまったのでは、小鹿野の取り組みも成果が町民に反映されないことになってしまいます。
 一度は老人保健無料などと、お年寄りを大事にしたかと思えば別枠で厳重に見張るような制度にしてしまった。実に思いつきとも言える残念な制度です。

■以上 別枠にした点、低所得者で負担が増えて改正すると言っても財源が明確でない点、担当医をひとつ決めるという制限、1診療所一ヶ月6000円定額診療、人間ドック補助廃止、終末期医療相談支援料、後期高齢者退院調整加算金、年金天引き等です。広域連合という団体の創設にも疑問があります。ことは言わば悪い言葉になるが「高齢者は早く見切りをつけろ、負担は自分たちでしろ。」なのです。いかに愛もなく軽率にこの制度を作ったか、小泉政権の2006年の勢いの中で財政削減のみ考えて強行されたとしか考えられないものです。ちなみに日本医療はGDP比8%で先進国中で最低なのです。なのにあえて大企業や高額所得者への減税をしてまで福祉を毎年2200億円減らそうとしている。あまりにも福祉に於いて暖かさの感じられない制度であって、小手先の改正では手に負えないので廃止を求めるものであります。

賛成多数で可決されました。(賛成9,反対は小菅高信、加藤喜一、橋聡(各議員)の3名)議長欠席


2008/4月議会にて請願が文化厚生常任委員会付託されましたが不採択となりました。

新年度になり後期高齢者医療制度と共にメタボ健診などの導入で保険の周辺に不具合が生じているようです。
 田島昭泉は平成20年3月議会にて秩父社会保障をよくする会からの請願「後期高齢者医療制度に対する意見書」の紹介議員になって審議をいただきました。残念ながら不採択となりました。不採択は提出時期が本件に関わる条例などの議案等と重なったことも大きく、十分な状況調査ができなかったのが理由の様ですが、残念です。


以下新聞記事などから多くの不具合ある点をあげ、参考にして頂きたいと思います。
 均等割、保険料の不均衡
  障害者の強制加入と補助打ち切り
   担当医制度の不具合
    人間ドッグ補助打ち切り
     メタボ健診の実際


マイケルムーアの「シッコ」でアメリカの民間保険制度に頼る悪環境が解ります。日本の健康保険はすばらしいのですが・・・


■2008年4月、厚生労働省によれば、その保険料負担は全国平均で一人当たり月6,000円、年間で72,000円となっています。
都道府県単位でバラツキがみられる。一人当たりの平均保険料がもっとも高いのは神奈川県(年92,750円)、逆にもっとも安いのは青森県(年46,374円)。県によってはなんと、二倍もの全国格差が生じることになりました。埼玉県の保険料は月額ひとり7,190円(年額86280円)で高額です。
また、一人当たりの医療費が高い地域も、一人当たりの平均保険料は高くなっています。具体的には、福岡県(83,740円)、北海道(73,876円)といった地域です。
ちなみに、保険料はこの「後期高齢者医療広域連合」によって、二年ごとに見直されることとなってはいるものの、国や地方自治体の現在の財政状況と進む一方の高齢化を考えれば、保険料が今後上昇していくことはほぼ確実で、下がる方向で見直されることは、期待薄と言わざるを得ないようです。
 保険料の決定の仕組みと減免措置は新制度開始から2年間設けられている「保険料の軽減措置」なども考え合わせると、ほとんどの高齢者においては、当初の経済的な影響は限定的なものと思われます。ただし、この先々もずっとそれが続くということには、まずならないと見込まれています。
 また、「後期高齢者医療制度」の発足により、保険料を一定期間滞納した人は、(最終的には、後期高齢者医療広域連合から、自己負担分を除いた額が償還されるものの)いったんは窓口において医療費の全額を支払わなければならないという、一時的に金銭負担が重くのしかかる「資格証明書の発行」へと、切り替えられることになります。その点で、低所得者にとっては、制度的に厳しくなったと言えそうです。

「均等割額」ですが、これは所得に関係なく加入者が平等に支払う、定額部分となります。
この金額も、都道府県ごとに異なっているのですが、だいたい一人当たり、3万円台後半〜4万円台後半といったところです。埼玉県では均等割額42530円です。

パイが大きくなる一方の「後期高齢者」において、保険料の負担割合が全体の1割のままではとても済まなくなるでしょうから、2年ごとの見直し時には、保険料の値上げに直結することになります。
また同時に都道府県としては、医療給付そのものの抑制に、並行して動かざるを得なくなってきます。
これは、具体的には医療機関に支払う診療報酬を引き下げることで達成されますので、それはすなわち、高齢者が受けられる医療に制限が加わる、言い換えれば、高齢者が受けられる医療水準の質が今後下がってくることを、意味するわけです。

■障害者の「強制加入」是正・厚労省方針
 厚生労働省は12日、65―74歳で障害者と認定された人が75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)への加入を事実上強制されている状態を是正する方針を決めた。同制度の加入は本来、任意であるにもかかわらず、10の道県で事実上の強制加入となっている実態が判明したため。10道県は見直しを迫られる。
 厚労省は14日に保険を運営する都道府県の広域連合との会合で問題点を指摘し、障害者を後期高齢者医療制度に強制的に加入させないように指導する。同省の調べでは北海道や富山、福岡県など10道県は同制度に加入しない障害者への補助の打ち切りを決めている。

■埼玉県 高齢者の「担当医」がいない  新医療制度 県医師会が自粛要請
 「後期高齢者医療制度(長寿医療制度)」で、75歳以上の高齢者のかかりつけ医となる「担当医」のなり手が見当たらない。県医師会が「高齢者の自由な診療を阻害する」などと反発、各医療機関に自粛を求めている。
 担当医は、無駄な投薬や検査を省くため、慢性疾患を持つ高齢者が一元的にかかる医師のことで、原則として診療所の開業医を想定している。診療計画書に基づく心電図や尿・血液検査、運動指導などは、月額600円(自己負担1割の場合)で済むのが特徴。
 担当医になるためには一定の研修を受け、埼玉社会保険事務局に届け出・受理される必要がある。4月の締め切り段階(14日)で、届け出のあった医師は272件。県内の診療所3865件の1割にも満たない。
 届け出が低調な背景には県医師会の対応がある。4月3日、県医師会は担当医制度適用に伴う診療報酬届け出などについて、「患者の(医療機関への)フリーアクセスを阻害する。患者の奪い合いが起こり、築き上げられてきた医療機関相互の良い関係に亀裂を生じさせることも懸念される」など、慎重な対応を求める声明を会員に通知。吉原忠男会長も「使い勝手を良くし、国の負担を増やすなど高齢者に優しい制度に見直すべきだ」と話す。

■人間ドック補助打ち切り、600自治体で
 厚生労働省によりますと、昨年度まで全国およそ1800の自治体のうち700あまりの自治体で、75歳以上の高齢者が人間ドックを受ける際、費用の一部を国民健康保険を通じ補助されていました。
 しかし先月、後期高齢者医療制度が導入されたことにより、75歳以上の高齢者が国民健康保険から切り離され、およそ600の自治体がそのまま高齢者への補助を打ち切っていたことが分かりました。(※小鹿野町は今まで通り25000円の補助は維持しております
 これにより高齢者の人間ドックの受診率が下がる恐れもありますが、厚生労働省は「自治体の自主的な判断で、制度の変更が補助打ち切りの直接の原因とは言えないのではないか」としています

■メタボ健診
 4月から始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)で、国民健康保険を運営する市町村の8割以上が、財政負担覚悟で保健指導を無料化して実施率(受診率)向上に躍起になっている実態が読売新聞の調査で明らかになった。

 国が目指す医療費削減や生活習慣病予防の効果に疑問の声は消えず、紆余(うよ)曲折が予想されるメタボ健診「元年」となりそうだ。
 腹囲測定と血液検査などの結果をもとに、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)か、その予備軍と判定されると、保健師などから食事、運動などの生活習慣を見直す「保健指導」を最大6か月間受ける。
 国は、4年後の2012年度末までに健診と保健指導の実施率を、それぞれ65%、45%にする目標を掲げている。市の担当者は「簡単にできる数字ではない。市役所の窓口などで住民に、地道にアピールしていくしかない」と話す。
 メタボ健診は40〜74歳の5618万人(厚生労働省推計)が対象。医療費が増える75歳以上の「後期高齢者」になる前に病気を予防し、医療費を削減するのが最大の狙いだ。成否の鍵を握るのは、健診対象者の46%を抱える市町村国保だが、国の描く生活習慣病予防と医療費削減に結びつくか疑問の声上がってます。

 健診や保健指導の実施率などが目標数値に達しなかった場合、国は後期高齢者医療制度への負担金を最大10%増額させるペナルティーを科すことにしている。これに対し、都内のある市は「別の制度の負担を重くする理屈が分からない」と首をかしげる。沖縄県内の町も「国の医療制度の失敗のツケを市町村に負わせるのはおかしい」と批判する。

 メタボ健診の数値目標は、従来の住民健診(2006年度で全国平均42%)よりもかなり高く、達成できるかどうか、心配する声も少なくない。受診率を上げるため、健診や保健指導を無料化する動きもみられ、特に保健指導を無料にする自治体は、本紙調査で85%に上った。

 保健指導は該当者を呼び出して面接し、行動計画を作らせ、半年後には目標を達成できたかどうか評価する。膨大な手間と時間がかかる作業だ。無料化する自治体の多くは、経費削減や人材不足の理由で、自治体職員の保健師などだけで対応する。

 健診・保健指導にかかる費用に対する国の補助は全体の23%。無料化によって残りを各国保が負担することになる。

 大和総研公共政策研究所の斎藤哲史次長は「(調査結果から)メタボ健診を丸投げされた市町村の困惑ぶりがわかる。国費で負担して全国一律で実施すべきだ」と話している。

 医学者たちの中には、制度開始前から〈1〉やせていても高血圧や高血糖になる危険が高い人が該当者から外れる〈2〉男性の腹囲85センチという基準がおかしい――として、改善を求める声も上がっている。東京大の大橋靖雄教授(疫学・生物統計学)は「基準の妥当性や医療費削減の効果は証明されていない。見切り発車した国の責任は大きい」と指弾する。