タジマしょうせんの詩

空の下  いのち  不知足  かべ 一枚の絵 作家の命




たねはどこからきたのだろう
ホーキ星のほこり 土の結晶 潮のリズム
神か仏か宇宙卵 どうどうめぐりの二重螺旋
ぼくはむかし種だった


1991/6

■タジマしょうせんの作品を語る4つのキーワードを短い言葉(詩)にして

ふたば
この世界に初めて姿を現した君
なんと愛らしい姿だろう
君の中には全てがあり
あらゆる可能性を秘めている
芽が吹いたその瞬間を
祝福し  見守ろう
めんたまびと
(目頭人)
私は見る人であり 見られる人です
世界を意識したとき
全てが目になります
目は世界の入り口です
夢をいつでも見られる目でありたい
太古 太古とは
私の中の遠い記憶です
かつて私が魚だったり
鳥だったり
微生物だったころの・・・
生命が伸びやかで自由な時代の夢なのです
たまご 植物にとっての始まりは種
動物にとっての始まりはたまご
始まりにはすごいエネルギーが詰まってる
始まりにはたくさんの物語が詰まってる
そしてその物語は想像もつかない未知を秘めている
宇宙 私にとっての宇宙は
雪の畑に続く迷路
隅々まで指し通す太陽の光
その光を何処までもつかみ取ろうとする木
どこまでも どこまでも

コスモス
迷宮 囚われていながらも 守られているところ
子供の頃 雪の積もった一面の畑に
足で踏み固めた道をどこまでもつくった
それがどこまでもどこまでも続き広がり
複雑な道となり
ひとつの宇宙になったのです

                                田島昭泉詩画集ができました→本人のページより


「文芸おがの」第7号に掲載 平成4年(1992)3月発行
           
           
いのち

林の切り通しの とてもよく陽のあたる
そして枯葉がカサカサとかわいている
あったかな昼
私は弁当を腹におさめてから横になった

ぬけるような青い空
鳥の声 遠い風の音
草がはじける音
羽虫の飛ぶ音
自分の体がこの大地に溶けてしまう
それはとても至福の感覚だった

ものの数分で私の体は大地の一部になり
早くもそこからは木の芽が顔を出し
根は血管のように体を包んだ
木は成長し どの枝にも葉が沢山ついた
葉に陽が当たると とても気持ちが良かった
私は木であると感じた

いつしか木は花を咲かせ 実をつけた
鳥がその実をつついた
私はちょっとくすぐったかったが
食べられる事はうれしく感じた
私はいつしか鳥の体の中にいることを感じた

青い空のなかを飛び
山々を見おろし それにつづく平野を眺め
清涼な空気 小川の水 そのおいしさ
葉陰を動く虫を食べた
赤い木の実を食べた
食べた物 感じた物 全てが私だった

うれしくて唄ってみた
沢山の私がこだまして
山々にすいこまれていった


1988



「文芸おがの」第2号に掲載 昭和62年(1987)3月発行

            空の下

快晴
縁側のひなたぼっこ
ボサノバ
コスモスの花がゆれる

こんな幸せな日に
なみだが出てくる
見晴らしが良すぎる日には、遠い国まで見えるようで

どうして憎しみあって
あらそいあう人がいるのか
こんないい日を
気持ちよく過ごせぬ人々がいるのか
部屋の中まで日が差して
赤子もひとり
遊んでいる

これから寒い冬に

(昭和61年10月)



2003(平成15年)11月

           不知足 (たるをしらず)

いろは村に行ってみた
うちには仕事もない 病院もないと嘆いていた

ほへと町に行ってみた
うちには仕事もなく 高校もない
鉄道もないと嘆いていた

ちりぬる市に行ってみた
うちには大きな仕事場もなく 大学もない
東京からも遠いと嘆いていた

わかよ政令市に行ってみた
ここはリストラにあふれています
税金も高いし生活費もかかる 犯罪も多い
地下鉄も欲しいと嘆いていた

東京たれそ区に行ってみた
過疎で学校は廃校になるし
知らない人ばかりで世知辛い
踏切わたるのに1時間かかるし
空気も水も悪い
のんびり田舎に暮らしたい。だとさ


2006(平成18年)3月
不知足 そのU
つねならむ国に行ってみた
人口が減って 高齢化社会まっしぐら
製造業者は 人口増の国をねらい
食品の輸入業者は
その国の人が困るほどに輸入し 残飯にする
「慎み」の精神も「もったいない」の心もいずこへ

うゐの奥山に行ってみた
一攫千金を目指した杉林
病める杉は花粉で人を襲う
ここぞと走る林道
追われた獣は人や畑を襲う
美しい自然はいずこへ

ケフコエテ国へ行ってみた
とにかく何処かと争っていることが自分を守る良策だ
自分が一番正しい 他は許さない
それぞれの代表が訴える
人の魂はいずこへ

あさきゆめみし宇宙の一角
ゑひもせす国 目が覚めもせず
 

  いのちの木 2013/5

何処までも宇宙に向かって
アンテナを広げる木
いのちを感じ
いのちと会話する

わたしの魂は空間に溶け込み渦となる
それは命となり再び戻ってくる

私を見守る生命の木
時には私を光の園へ案内し
時には災難の傘となってくれる

夜空をみていたら
さけびたくなったよ
おかあさぁーん

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十戒 誤解 それでいいの戒   2014/12

【一】人とすれ違っても天気のお話で済ませる。決して政治の話はしない。
【二】井戸端会議ではスーパーのお得情報で済ませる。決して消費税の話はしない。
【三】忘年会では夫婦喧嘩のぼやきで済ませる。決して集団的自衛権や戦争の話までしない。
【四】PTAの集まりでは例年通りの話で済ませる。決して放射能の話はしない。
【五】お祭りでは今が楽しいという話で済ませる。決して未来の不安を語ってはいけない。
【六】音楽会では静かに話す。決して秘密法の話はしない。
【七】ブログでは日常のありきたりだけを載せる。決して訴えてはいけない。
【八】会社では儲かる話で済ませる。決して脱原発の話はしてはいけない。
【九】役場内では休日の過ごし方の話で済ませる。決して世間を二分する話はしてはいけない。
【十】新年会では笑える話で済ませる。日本は一千兆円の借金があり、戦争に近づき、情報は統制されつつあり、沖縄から基地は消えず、人口は毎年20万人ずつ減り、貧富の格差は確実に広がり、3.11の前に電気料金は原発のために世界一高額になっていて、放射能の危険から日本の農水産物の輸入規制は41カ国あり、福島第一原発事故での避難生活者は未だに15万人いて、子供達の未来は明るくないと言うことは決して話してはいけない。

 大笑い 2014/5/25

「きのう、大笑いしたよね。なんで笑ったんだっけ?」
「えっ。笑ったっけ?」
「あんな大笑いしたじゃん!」
「してないよ!」
「だいじょうぶ? 心配だなぁ」
「してないって」
「あっ きのうじゃなくて、おとといか! なんでだっけ?」
「おとといも大笑いなんて、してないって!」
「ええっ! こりゃだめだ!」
と、またしても二人、大笑い


一枚の絵

おとうさん
絵なんか買ってきて
道楽はいやですよ

なんだばかやろう
俺の心をゆすぶった
絵の一枚ぐらい
手元に置いてなにがわるい
たとえ一週間でも
俺の心を満足させたら
一週間のカウンセリングより安いもんだ
 嫁に言ってやったんだ。

だっておとうさん
この絵がわかるの

ばかやろう
簡単にわかってたまるか
それを楽しむんだろうが
俺から想像力ってもんを奪う気か
 嫁に言い返したんだよ。

一枚の絵が歩き出した

(2009/12/7)


作家の命

「作家の命」2009/12/11

百枚以上の絵が燃えていた
ひとり暮らしの画家の遺作は
遠い親戚に渡された
それが数日の運命だった
拾われたたった一点の作品が
 ある家に掛けられた
そこに作家の命が燃えていた

絵がネットオークションに並んでいた
ある著名な作家の作品だった
あすの米を買う金が必要
画商無き今
 オークションは生きる糸だ
何点かの作品が落札され
 作家の糧となった
生きるための挑戦が続いている

(2009/12/11)


「描けない」2009/3


絵が描けない
多作ではないので
インスピレーションが
 涌いた時だけ描けばよいと思っていたが
絵が描けない

時期が来たから描くのではなく
請われて描くのではなく
内なる衝動が手を動かして
・・・等と言っても描けず

私には絵を描く理由が
 無くなってしまったのか
生きる理由も無くなってしまったのか
そんな自分が寂しく感じたら
 絵が描きたくなってきた

「EGG」2010.3

宇宙の混沌たる雲間から生まれ
星にたどり着いた卵
卵には全てが詰まっている
未来も過去も
男も女も
プラスもマイナスも
どちらもくっつけば
 消えてしまう危うさの中で
ひとつの芽が育つ
私はどこから来て何処へ行くのか
真っ直ぐ伸びることがその答えか
デジタルな電気の海の中で
消えてしまわないように
たえず泳ぎ
とどまらず


「BOX」2010.3

長い時間大切にしまわれていた一粒の種
おまえは、どこから来たのか
流星からこぼれ落ちたのか
光のつぶから生まれたのか
神の微笑みから生まれたのか
箱を開けると
種の中の渦巻きが動きだす
渦はうねりとなって外に出る
それは双葉となって天を目指す
流星からの遠い波動を感じ
光の温もりを受け
神の声を聞こうとしている
大きく葉を広げて天を目指す


やさしい月 20110511

やさしい月が見ているよ
新たな命を見ているよ
暗い夜なんてないのさ
僕がいつでも見ているよ

 やさしい月がお話ししてる
新たな命にお話ししてる
さみしい夜なんてないのさ
僕がいつでも守ってあげる

あらたな命 20110511

会えたね
泣いたね
笑ったね

きみに出会えてうれしいよ
若葉が歌い
花が微笑む

会えたね
泣いたね
笑ったね

小さなあんよが
大地をつかみ
小さなお手手が
世界をつくる

きみに出会えてうれしいよ
若葉が歌い
花が微笑む

会えたね
泣いたね
笑ったね

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「君が見た夢なら私も見たい
20101206

音楽は自由を奏で
音の粒子が光となる
脳裏に映る風景は
夢のような花園か
誰も知らない深海か
君が見た夢なら私も見たい

絵画は命を彩る
色彩の音楽 線の声
脳裏に響く風景は
夢のようなシンフォニア
誰も知らない天使のつぶやき
君が見た夢なら私も見たい

君は見たという
君は聞いたという
君はそこに居たという
君が見た夢なら私も見たい

君に会いたい 20110509

君に会いたい
君に会いたい
僕を子供にしてくれた
君に会いたい
僕をどこまでも認めてくれた
君に会いたい
ずぶぬれになっても
どろんこになっても
やさしい笑顔だった
君に会いたい

僕を子供にしてくれた
君に会いたい
僕をどこまでも認めてくれた
君に会いたい



かおる風をもう一度
20110508

あやしい風
灰色の雨
世界が変わった

紫の雲
まがった陽ざし
世界が変わった

神のふところなくなった
神のまなざしなくなった
神のぬくもりなくなった

かおる風はどこいった
おどる光はどこいった
あまい雨はどこいった

かおる風をつかまえたい
おどる光につつまれたい
あまい雨にうるおいたい

神のふところなくなった
神のまなざしなくなった
神のぬくもりなくなった

かおる風をもう一度
おどる光をもう一度
あまい雨をもう一度

かおる風をもう一度
おどる光をもう一度
あまい雨をもう一度
もう一度
もう一度

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悪魔の声 2011/4/26

ぜったい安全です
ぜったいこわれません
ぜったい直ります
ぜったい元にもどれます
ぜったい死にません

ただちには大丈夫です
ただちにはこわれません
ただちには影響ない
ただちには病気しません
ただちには死にません


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ヤリと毒         2012/12/22

危険なヤリも毒も
持つことも使うことも無い世界
なんとすがすがしいことだろう

ある人は
ぜいたくな生活のため
毒はうまれても仕方ないと言う
毒はあふれかえり
毒は埋めることもできない
毒は誰も引き取り手もいない
それなのに人はまだ毒をつくろうとする
毒を持っていれば
誰かの毒に立ち向かえるともいう

ある人は
ヤリを持てば安心だという
ヤリを誰にでも持たせる
ヤリはもてあそばれ
ヤリは見せびらかされ
ヤリは本当に使ってみたくなる

ヤリと毒を持ってから
本当の笑顔が無くなった

ヤリと毒を捨てた人たちがいた
それは太陽のもと
地球に生まれた人たちの
本当の姿であった

豊かな自然の恵みを分けあい
お互いを信頼しあい
笑顔でふれあい
愛ある言葉で埋めつくされている

危険なヤリも毒も
持つことも使うことも無い世界
なんとすがすがしいことだろう


若狭の毒瓶 (2015/12/18)

毒は瓶の中
蓋がしてあるから
大丈夫
目の前に置いてあるが
触らなければ
大丈夫
瓶はとても厚い
ひび割れも管理してるから
大丈夫

敦賀の毒瓶は海向こう
風も潮もこっちに来る
美浜の毒瓶は釣堀の前
海水も温かくてよく釣れる
もんじゅの毒瓶は荒波の向こう
割れたり漏れたり二十年
使いもせずに六千万
一日の管理費六千万

病人が増えたぞ
毒ビンとは関係ないよ
里の頭はいう
人には影響ないよ
管理人もいう
うまく使えば儲かるよ
国の頭はいう

大飯の毒瓶はトンネルのすぐ向こう
姿も見えずになお心配
高浜の毒瓶は道の下
石を投げられたら割れちゃいそう

毒瓶が地震で棚から落ちないように
さらに縛ったり押さえたり
毒瓶が波にさらわれないように
さらに壁を高くする
不届き者が壊しに来ないように
さらにお巡りさんも目を光らせる

危険な毒に手間ばかり
沢山の金が消えて行く
誰のための毒瓶だい
若狭の毒瓶は十五本
埋めるところもない
        (2015/12/6に若狭湾を旅して)