水村健治

詩人 kenji mizumura   小鹿野町下小鹿野462


詩集 いのちの種 水村健治 2020/4
2020年4月発刊 詩集 「いのちの種」(定価1000円)


罪   水村健治

昭和八年二月二十日
ひとりのやさしい青年が
警察署の中で
特別高等警察官の拷問で殺された
治安維持法といつ狂気の中で
日本人が日本人を殺した
死体をひきとりにきた
母親は絶叫した
青年のいのちを奪っただけでな<
彼の愛し芝ちのすべてを奪つた
彼を愛した
父、母、恋人、姉妹弟、友人の
愛のすべてを奪った
治安維持法には
拷問して殺していいとは
どこにも書かれてない
手を下した警察官は
虐殺犯として逮捕されるべきだった
寒中、裸にされ
拷問は、三時問にも及んだ
釘か錐が打ち込まれ
肉がえくれた跡が無数にあり
喉仏、指の骨が折られ
両足が充血して赤黒<ふくれあがり
今にも割れそつだつた
海外ドつマ「升U事フォイル」
第二次大戦時、英独戦闘中
いかに戦時化であろうと
「罪は罪」と軍部との軋蝶に屈せず
殺人犯を追った刑事がいた
〈資料〉
 日経新聞「愛の顛末」
 梯久美子著 小林多喜二編
2017/4

まあるい地球

まあるい地球なのに こぼれない海
 まあるい地球なのに こぼれない人間
まあるい地球なのに こぼれない夢
まあるい地球なのに こぼれない愛


                               2000.1.1

テロとアメリカシロヒトリ・キリギリス譚

また始まったね
地球人の争いが
そこを通らなければ
次へ行けないのだろうか
わたしたちの仲間の
星のところまでやってきて
自分たちの星の姿を見ている
地球人もいるのだから
もう少し地球のことは地球人にまかせてみよう
しかしあまりにも悲惨な光景だ
木や虫たちが反乱を起こさなければよいが


2012.5.15 詩集「気づいてあげられずに」より


人が消えた町

バスが来て
人間たちを
連れて行ってしまった
何処へ行ってしまったのだろう
こんな美しい町から
人が消えた
賑やかだった公園から
人が消えた
田畑にも
牛舎にも
人影は見えない
学校や会社や
商店街にも
人の声は聞こえない
シーンと
静まりかえった町
みつばちや
草花
玉ネギや
庭の木々
何も知らされず
家族の帰りを
待っている




気づいてあげられずに 詩集 水村健治
詩集 「気づいてあげられずに」 2012年5月発刊



2010/2/11~22 さいたま市 あるぴいの銀花ギャラリーにて



朝寝ぼう


朝寝ぼうをしていると
朝一番の気持ちのいい
宇宙の大気を吸いそこね
暑い陽射しの中の草とりとなる

朝寝ぼうをしていると
未だ花の落ちきらぬ
幼いきゅうりの
つゆだまを見そこね
暑い陽射しの中の種蒔きとなる

朝寝ぼうをしていると
物語を含んだ涼しげな
カナカナの声を聞きそこね
暑い陽射しの中のさく切りとなる

医療生協さいたま西秩父支部だより147号 2009/8月1日記載

   「春を待つ」


  暖をとれる人間は
  しばし生命を
  暖めることができる
    野に生きるものは
    吹き荒れる凍風から
    必死で身を守る
  冬を楽しむ人間は
  鍋を囲んだり
  音楽を聴いたり
  こごえる心を
  暖めることができる
    野に生きるものは
    春の記憶をひもとき
    必死で暖める
  厳しい冬を越えたものほど
  ほんとうの春の喜びを
  知るかも知れない

2009/4奈倉文庫掲載

この広い宇宙の一点に 無限の時間の一点に ひとりひとり座っていると それぞれの生きた証が 動かしがたい重みとなって そこにあることを知る
2009年1月 詩と書


 きっとある あなたの居場所

  あなたは
  そんなところにいなくていい
  あなたを苦しめる
  そんなところにいなくていい
  あなたを情けなくさせる
  そんなところにいなくていい

   そんなところで
   根性なんて育たないさ
   そんなところで
   やさしさなんて育たないさ

   ひとまずそこから
   離れて・・・

   きっとある
   いのち喜ぶ
   あなたの居場所。
2007/6 「4人展」にて
→2008年 この詩は宮城和歌夫さんが曲を付けてCDになっています。
[居場所]♪作詞:水村健治 作曲:宮城和歌夫
あまりにもつらくて苦しい時、ひとまずそこから離れて下さい。
きっとあります あなたの居場所が・・・


「土のふところ」


土は、自分の意見を押し付けたりしない
それぞれの草木が生きたいように生きているのを喜んでいる

土は、自分の色を押し付けたりしない
それぞれの花が自分の好きな色で咲くのを喜んでいる

土は、選り好みをしない
風に運ばれてきた種 鳥が運んできた種 人間が蒔いた種
それぞれが それぞれのやり方で 根をおろし 生き始めることを
喜んでいる


水の胎内で


この水は 生命のもとになったり 
   洗い水になったり
この水は 酒になったり     
  小便になったり
この水は お湯になったり    
 氷になったり
この水は 愛の涙になったり   
      悲しみの涙になったり
この水は すべてを生かしたり  
   すべてを殺したり
この水は 日々の生活と生命に  
    深くかかわりながら
     恩着せがましくもなく
ごく自然に 
        この地球に存在している

2003(平成15年)小鹿野広報2月号記載





土ん子


おらあも
おめえも
この土から
産まれた土ん子だ
だかんら
おらあのぐちも
おめえのぐちも
みんな腹におさめて
つやつやした紫色のナスや
まっかなトマト
いっぺえならして
食えや食えやと
あったけえ眼して
土が云うんだ
だかんら
どんな貧乏しても
この土を裏切れんな


1986詩画集「土くれ」より
詩画集 土くれ
版画は小菅光夫


*-*-*-*-*水村健治略歴*-*-*-*-*
1943 東京都神田神保町に生まれる
1966 日本大学法学部卒業
   荒川区の公立学校事務職員となる
    読書会に入り、詩を書き始める
1970 北海道帯広郊外大正町の畑作農家にて農業実習
1972 広島県迫谷牧場にて農業実習
1973 ダッシュ株式会社秩父研究所に入社
1974 農業研究団体、日本ミチューリン会員になる
1977 小鹿野奈倉にて百姓になる
1978 奈倉文庫の創設に参加
1979 ガリ版詩集「つちくれ」を出す
1981 奈倉文庫新聞「なぐらぶんこ」の編集にたずさわる
1984 秩父市内「迷夢」にて詩の個展
1985 「詩と民話を語る会」創設に参加
1986.11.1 詩画集「土くれ」発刊(詩:水村健治・版画:小菅光夫)
1988.4 月刊「詩と思想」に詩が載る
1997 文芸誌「風車」創刊より参加
1998.8 詩と民話を語る会 会誌3号
1998~2002 奈倉文庫運営委員長
2004.2 文庫新聞300号 記念誌はガリ版で製作
2007 CD「居場所」出版 作詞:水村健治 作曲・唄:宮城和歌夫
2009 文庫30周年の編集に加わる
2010.2 「呼吸する言葉・心の版画 水村健治・高橋清一」にて詩の発表       アルピーノ銀花(さいたま市)
2011.4 奈倉展 特別展「水村健治展」
2012.5 詩集「気づいてあげられずに」出版
2017.11 オジサンタの会お宝ラリー展にて自宅開放個展
2020 詩集「いのちの種」刊行

その他「文芸秩父」「風車」「詩と民話を語る会」「医療生協さいたま西秩父支部だより」等の紙誌にて詩の発表。全国紙「季刊銀花」「詩と思想」にも詩が掲載される。秩父地域中心に詩の朗読会、個展など行い現在に至る。

扉の言の葉
春への序奏
ほぐれる心
枯れ葉

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