【森林力】
12月初旬、小鹿野町の四阿屋(あずまや)山(771メートル)の山道は枯れ葉で覆われていた。足でかき分けると、無数のドングリが現れた。
「草でかごも作れるのよ」。町の里山案内人・粂(くめ)紀子さん(46)は傍らの雑草を3本引き抜き、器用な手つきで数センチの小さなかごを瞬く間に編んだ。林野庁の「森林浴の森100選」にも選ばれた自然豊かな里山だ。
30分ほど歩くと、ひんやりとした杉林に入る。黄色い実が鈴なりになったユズの木。両神神社奥社近くの杉の木の幹には、モモンガやキツツキの巣とみられる穴が開いていた。
スタートから1時間余り。急な岩場を登り切り、山頂から遠くの山々を見渡す。深呼吸すると、胸のつかえが取れたような、すがすがしい気分になった。
こうした森の<癒やし効果>に期待を寄せる自治体や施設が増えている。
小鹿野町が「森のいやし効果促進事業」をスタートさせたのは2005年度。森の散策コースを歩き、気分をリフレッシュさせ、食事や温泉を楽しむことで、健康づくりにも役立ててもらおうという取り組みだ。
翌06年度には、町内の自然を案内できる「里山案内人」の養成講座を開講。粂さんら40〜60歳代の17人は、里山の地形や動植物、同行人の救命救急措置などを学んだ。
同時に町は、里山の散策路に案内板や道標などを設け、四阿屋山を含む3コースを整備。町内の温泉や宿で休息できる日帰りから2泊3日まで3プランを用意した。プランには、町立病院で血圧や血液を調べるメディカルチェックのほか、カウンセリングも含まれる。「心身共に気分転換できるよう工夫した」と担当者。
案内人はこれまでに、地元の児童ら300人以上をガイドした。プランの申し込みはまだ2組と、町外から人を集める起爆剤にはなっていないが、2回目の養成講座も昨年11月からスタートし、現在8人が受講している。
町計画推進室の高橋稔室長は「小鹿野ならではの森の癒やしを追究する。縄文時代からの歴史、都会にはない自然を里山案内人がガイドすることで全国に発信したい」と期待を込める。
以上です。