J・クリシュナムーティ「自我の終焉」

絶対自由への道

篠崎書林

 この本はクリシュナムーティがこれまでに書いたものと、彼の講演の中から選んで編集されたものですが、読者はこの本の中に、人間の根元的な問題についての明快で現代的な声明を発見することでしょう。それと同時に、その問題を解決することができる唯一の方法によって−−すなわち独力で、そして一人で−−それを解決したい、という誘惑を感じることでしょう・・・・・既成の宗教や、それに属している宗教家や、その聖典、教義、制度、儀式というものは、人間の根元的な問題に対して、誤った回答を与えているにすぎません・・・・・人間の実在の根拠とすべきこの永遠の「真実在」に到達するのは、自己認識を通してであって、誰か他の人間のシンボルを信仰することによってではないのです。
 オルダス・ハックスレイ−−−本書の「序文」より


クリシュナムーティは、生存中から伝説的な人物になった数少ない人間の一人である・・・というのは。クリシュナムーティが、心理の領域で成し遂げたことは、物理学においてアインシュタインが行った革命に匹敵すると言って良いからである。アインシュタインの相対性理論は、光の速度は光源からの運動や光源へ向かう運動とは関係なく、全ての状況において不変である、という単純な事実を出発点にしている。一方クリシュナムーティの出発点もそれと同じ様な単純な観察に基づいている。それは、全ての心理的苦悩は精神の中で始まり、またその中で終わると言うことである。つまり「精神は自ら作り出した出した牢獄である」。したがって、変革と苦悩からの解放は、絶え間ない精神の活動が終焉する事によってのみ、達成することができる。
 ロバート・パウエル−−−『禅と真実在』より