合併しないと村はどうなるの

名栗と飯能の合併を考える会講演会平成16年2月7日(土)での取材です。

小さくとも輝く自律の村づくり 合併問題に対する現段階
長野県栄村長 高橋彦芳氏

(以下はレジメ。その下に講演の要約を書き込みました。)

はじめに
・地方制度調査会は「今後の基礎的自治体は、住民に最も身近な総合的な行政主体」としているが、基礎的自治体は政治の単位であり、「住民の、住民による、住民のための政府」であると考える。
・平成の市町村合併政策では、基礎的自治体の規模と財政効率化とを連動させているが、基礎的自治体の規模は、地域の特性を基本とし、財政の効率化は公共性を旨として、実践的住民自治によって行うべきものと考える。

1 市町村合併問題に対する意見
  栄村は平成17年3月31日を期限とする「市町村の合併の特例に関する法律」による市町村合併については、合併しないで自律の村づくりを進める。(平成16年1月30日 栄村議会決定)
(1) 合併問患への取組経過
   合併問題の一般説明会(集落単位1回、地区単位3ケ所1回)
   全国規模の小規模自治体フォーラム(平成15年2月22日〜23日)
   合併問題に取り組む手法に関する住民アンケート(中学生以上、対象者2.469人、回答2.216人、回答率90%、村の将来について研究62%合併について話し合う21%、平成15年3月)
   栄村将来像モデル作成と懇談会(百人委員会1回、地区単位3ケ所1回、集落単位1回)
   以上の結果を集約すると、住民は将来に大きな不安を持っているが、これを合併・自律で対処してほしいという声や期待感はなかった。平成15年3月のアンケート結果が住民の意思と判断した。
   平成16年1月30日臨時議会で、合併しないで自律の村づくりを決定
 (2)合併問題に対する見解と今後の展望
   市町村合併は、本来、市町村間の財政力格差を調整してより安定した自治体をつくる究極の手段であるが、平成の市町村合併は広域的、多極的合併による財政の効率化を図るもので、小規模、辺境地の自治体にはデメリットが大き過ぎる。
   栄村は経済的に低位にあり、住民生活に財政が深く係わってきた。今、住民の社会的不安が増大しているとき、小さくても村を単位とする政治機構は残す必要がある。足りないところは、広域連携、県の補完を求める。
   合併しなくても財政の効率化の努力は必要である。対外的な効率化(公共事業等)については、田直し、道直し、げたばきヘルプなど既に実践してきた。今回、更に内部的効率化を図るため、5年を期間とする「栄村将来像モデル」を策定、財政の枠組みを中心とした新しい時代の村の「構え」をつくる。
   将来の展望については、「栄村将来像モデル」を取り入れながら、平成17年を初年度とする5カ年の基本計画を作成する。
   小さくとも輝く村のメッセージを発信し、都市との新しい交流、支援関係を結び、地域の特性を生かした村づくりを目持す。

2 自治体の効率性と公共性
 町村合併を契機とした自治体の効率性と公共性が問われるが、栄村将来像モデルと実践的住民自治による自治事務について、その内容と考え方は次のとおりである。
(1)栄村将来像モデル
   モデルは主として財政の枠組みを具体的に示すものである。モデルは決定値ではないが、実現可能なものである。
   目標をできるだけ具体的にするため、平成20年頃を目標に、財政規模を現在より30%位縮減する。                  
   財政比率の最も大きいものは人件費であり縮減を要するが、各種の配慮が必要である。常勤・非常勤特別職(人員削減を含めて議員45%、常勤57%、非常勤特別職49%)、一般職(リストラなし、自然減を含めて15%)臨時職員(5%)。
   増税は難しいが、受益と負担の調整を行い、自主財源の確保に努力する。
   保健・医療・福祉・教育・雪対策は重点的に確保する。
   行改組織を見直して行動する役場に改革し、現物給付型の行政を拡充する。
(2)実践的住民自治による自治事務
   基礎的自治体の行政は、住民参加型の地域の特性を生かした「行政と住民の協働」による実践的な活動を通して自立性を高めていくことである。小規模自治体においては軽済,財疎の地域循環性を高めることも重要な課題になる。
   農民が主体になり、地域の技術を生かした「田直し事業」を実施。平成元年から平成14年にかけて、水田36.6ha、1.251枚を450枚に整備。事業費1億4,448万円、10a当たり39万4千円、公共補助事業の3〜5分の1で仕上げている。
   集落内の小道を行政と住民の協働で整備して機械除雪を可能にする「道直し事業」を実施。平成5年から平成15年にかけて、幅員3.5〜4m舗装道路を42路線8,182m整備。総事業費2億2.700万円、u当たり約1万円、公共補助事業の3分の1で実施している。
   居宅介護を住民パワーで行う「げたばきヘルプ」体制を実施。2、3級ヘルパー160人養成、内118人が村社会福祉協議会に登録活動中。ヘルパー報酬は1時間当たり身体介護1.500円、家事支援1.000円、1号被保険者の保険料は現在1.950円。
   除雪事業、介護事業、観光事業、上下水道の整備・管理事業等住民の生活環境、福祉に関する事業についても、.行政と住民の協働、資金循環型の−地域経済に編成していくことが大事である。


76歳
お元気です。

会場は超満員
驚くことに高校生の学生服姿や
小中学生の姿も見えた。
ある高校生は質問もしていました。

 人口は2600人です。人口密度は9.5人/平方q。41%の高齢化率です(65歳以上)。こちらは冬でも仕事ができるなぁと感じました。合併しないで自立して行く。議会と決めた。9:5で議決されました。2600人で村の予算は30億です。1人当たり100万円。飯能市は8万人4〜5分の1か?国はスケールメリットで合併させようとしている。他県では地図で示して指示をしているようだ。栄村も7市町村(広域)で10万人。1000平方qになってしまう。人口密度が薄くなってしまう。市では大きくなればいいとの勘定でしょうが、歩調が合わないのです。問題は財政。法で決められて税金が入る。制限させられる。政府が吸い上げ交付税で戻す。全国では97%が交付されている。国で12〜13兆円では町村がやって行けなくなった。20兆円ほど必要になった。避けて通れない問題となった。
 行政は住民が主権を持ったものだ。リコールも監査請求もできる。住民が意見を言って決めて行くにはある程度の大きさがある。大きな市では投票率も下がる。自分たちの村は自分たちでつくる気持ちが大切だ。村ではアンケートも90%の回収率だ。小さくても工夫と行動で財政も節約して効率化できる。
 話してるうちに合併協議会になってしまう。離脱も今は多く聞こえる。行政で話を進めて、住民がまずいと声を出す。諏訪郡全部で協議会もやっていたが茅野市は67%が反対。原村も離脱。協議会になるとお金も職員も出すようになる。住民も「まず村の中で話し合いを」と言っている。二つの道を行くのはおかしい。
 合併のことであわてることはない。垂直調整(国や県からの)ではなく、町村でほんとに格差ができた時、水平調整すればいい。その時の究極の手段だ。
 7市町村の「多極の手段」合併では調整がうまく行かない。個性的なことを汲んでくれるか?辺地の村との合併は中心までが80qになる。今でも40qはあって大変なのに。デメリットが大きくなってしまいます。この地に政治的決定者がいなくなってしまう。支所とは言っても行政マンしかいない行政体になってしまう。
 経済水準は低い村です。除雪はいくらでもやります。5〜6軒のために遠くまで行きます。効率は悪いがやらざるを得ない。お金がかかるがやらねばならない。合併して、除雪もやらなくなれば住民の移動が起こる。
 栄村だけの事業「げたばきヘルパ」「道直し」「田直し」で効率化してきている。世の中には一律でやることでお金がかかる物もある。
 「30億でももっと減らせる」、5カ年基本計画「栄村将来像モデル」で工夫して職員と共にやります。平成20年を目標に財政規模を30%縮減し20億にして行く。少なくも22億1千万までにはできると踏んだ。モデルとしても可能性はある。人件費これが一番減らせる。モデルとしては議員は45%カット。村長助役も57%カット。一般職はリストラ無しで15%。臨時も5%減でやる。分かち合いです。このくらいのことは覚悟していないといけない。
 総合支所となると人間も減らされ何でもできるとはならない。合併したらリストラ。総合支所も多くて25〜6人。今は住民100人に職員3.3人だが、合併すると1人になるだろう。人件費は総額予算の15〜20%ぐらいだ。今は30億だが、7億5000万ほどの切り盛りの支所になる。自立して20億の方が良い。
 田直し事業は補助金だと180〜200万かかる。これを40万でやっています。補助金はもらわない。もらうより安くできる。「除雪」のための「道直し」では復員3.5〜4メートルを8182メートル。約8qやった。1u当たり1万円でできた。公共補助の3分の1だ。下層処理も臨機応変に対応してやる。
 160人の「げたばきヘルパー」。160人のうち118人が登録され、8班に分かれている。他の仕事をしていて社教から言われれば行く。心配していたが隣の家でも、何でもヘルプがうまくいっている。
 除雪も一冬で1億2000万。村の兄ちゃん達に払える。80qを40班に分けて、朝3時半から出てもらっている。
 保険料も1950円。長野県の平均3500円。6割でできている。
 公社としてはものは村の中から買う。外から買えば安いが、地元から買う。誰のための効率化か?酒屋は村に必要。
 工場は建ててやって、富士通が20年間いたが、昨年撤退した。60数人が働いていた。残念だ。地元の風土と関係ない物はやらない。地産地消で行きます。地元の物を加工する。エゴマ復活。エゴマクッキーは少しですが東京にも出してます。
 都市のシルバー頭脳を求めてます。給料は払えない。栄村の資源を活用した研究をしてもらいたい。国は合併させずに国家を上げて人材を地方に還元する使命がある。

質問 高橋村長答弁
村の方の意見を取り入れると言うが? 議論だけでなく行動だ。行動参加です。
受益と負担の調整は? 国保などは1世帯8万ほどだが、受益者アップせざるを得ない。
水道料は12立米で500円と県内でも大変安いがこれも上げて行く。
元気の源は? 都市化していないこと。村人がしたいことは村が支援する。
(絵手紙の村、ネコハウスの村としても有名らしい)
村の一番のほこりは? 苦境に耐える人達です。
他の自立した自治体は? 小布施町、坂城町、泰阜村。シンポジューム明日やります。原村、八村も
理想の栄村は? ひとりひとりが自立して輝いている村ですね。